フリーホラゲーを呟く会

ホラーフリーゲームの感想を不定期に呟く。時々痛い小説があったり。

NORMAL ABNORMAL 1章 1

 ヒカリの奴がしくじりやがった。バランスを崩し、立て直そうとするアイツに、相手がでかい図体で突進してくる。何やってんだよ、アイツは。調子に乗るなと何度言えば覚えるんだ。そんな風に心の中で毒づきながらオレは突進してくる奴に銃をぶっ放す。至近距離で急所を数か所撃ち抜いた。普通ならもうそろそろいいはずだ。

 サンキュ、という声がした。アイツは、オレが作った相手の一瞬の隙に体勢を立て直し、持っていた大剣で相手を切り裂く。相手の血が、アイツの顔にかかるが、アイツはニコニコ笑ったままだった。

 

 

「だからお前は未だに半人前なんだよ!! あんなブンブンぶん回したらバランス崩すに決まっているだろ! 今日だってオレがいなかったらケガしてたんだぞ、わかっているのか!?」

「今日もオッサンがうるさいわー」

「オッサン言うなって何度言ったらわかる! オレはまだ! 29! てか今その話どうでもいいだろ!!」

 腕立て伏せをしながらヒカリはめんどくさそうに笑う。オレは正座しろ、と言ったはずなのだが。いつから正座は筋トレメニューに加わったのか聞きたくなる。

 反省会を行い、今日の収穫について話し合う。……が、成立はしていない。正直に言うが、反省会と言ってもコイツに反省のはの字もない。話し合うと言っても大抵全く違う方向に向かう。真面目な話だって言うのにコイツはすぐはぐらかす。困ったもんだ。

 ヒカリ。5年前、とある事情でオレが拾ってきた。栗色のサラサラの髪、透き通るように青い瞳、中性的で整った顔つき、すらっとした手足だが、ガリガリでもなく、綺麗な筋肉を持っている。まあ、この生意気な態度と毒舌と不真面目さがなければ、本当に綺麗な容姿をした17歳の少年だ。

 コイツとは長い付き合いではあるが、見た目に対してかなりの悪ガキだ。年々オレに対しての罵倒とからかいの度合いが酷くなってきている。正直困ったものだ。

 やっとのことヒカリが真面目に話を聞き始める頃にはもう日が大分傾いていた。どれだけオレの話をまじめに聞きたがらないんだよ、コイツ。賞金狩りで生計立ててるオレらが、賞金狩りにやられないようにするために注意すべきことをもう5回は言ったぞ。聞いてないのか。そんな文句ばかりが出て、頭が痛い。そんなオレを見て、ヒカリはケケッと笑う。

「そんな固く考えないでよリク」

「お前は多少危機感持て。まじめに危なかったんだからな」

「アリガトネータスカッタヨー」

「お前はオレをイラつかせて何が楽しいんだ?」

「そのイラッとした顔がウケる」

「殴られたいか?」

「遠慮しとく」

 いつものようにする会話。似たようなやりとりはもう何回もやっている。相変わらず反省する素ぶりを見せないヒカリに溜息をつきながら、泊まる宿のドアを開けた。

「……リクさん、ヒカリさん、おかえりなさいです」

「ただいまラグちゃん。いい子に待ってて偉かったねー」

 クマのぬいぐるみを抱えた黒い髪のおさげの少女がオレ達を見て嬉しそうに駆け寄る。そして、ヒカリに頭をなでてもらって嬉しそうにしている。一人で待っているのは寂しかったんだろうな。いつも悪いな、と思ってはいる。

 ラグは1年ほど前、オレ達について来た子供だ。黒い髪が珍しいとは思ったが、その垂れ目で大人しそうな顔にある瞳は、滅多にみない紫雨色、つまり紫色だった。何でオレ達についてきたのかは知らない。彼女の昔は、彼女自身も覚えていないと言った。ただ、人一倍臆病で、優しい性格の持ち主で、ヒカリとは正反対だ。

 ラグ、とオレは声をかけ、ラグを抱っこする。ラグは少し驚いた表情をしたものの、すぐに笑みを浮かべる。その笑みを、オレは目を細めて見つめる。ホッとする、愛らしい笑みだ。

 ヒカリは荷物を置き伸びをする。ヘラヘラ笑ってはいるが、少し疲れている様子ではある。

 そろそろ時間だし、ご飯でも食べに行くか。オレがそう声をかけると、2人はいい声で返事をした。

 

 

 オレはリクベルト=アウル。アブノーマル竜族。

 旅をしている理由はオレにはない。

 ただ、償いたかった。

 

 

To Be Continued……

 

 

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