フリーホラゲーを呟く会

ホラーフリーゲームの感想を不定期に呟く。時々痛い小説があったり。

リザインサバイバル3

 ダメか、と彼は呟く。これで12人目だが、明らかな証言が出てこない。頑張れば一週間で終わるでしょ?と笑って言ってきた生徒会長の笑顔を、全力で殴り倒したい衝動に駆られる。終わるわけないことを知っているはずだ、生徒会長なら。あの眼鏡優男め、と心の中で毒づいた。
 明らかに村人じゃない彼を村人は怪しそうにじろじろ見てくる。確かに彼は村人の一番背が高い青年より背が高いのもあってひどく目立つ。持参したタオルで汗を拭いつつ、濡らしたタオルを頭にまく。とにかく暑くてたまらない。
 雨とは縁がなさそうなカンカン照り。酷く乾燥していて、喉も乾く。幸いここらは地下水があるらしく、井戸はちゃんと生きているのが幸いだ。持ってきていた水だけでは心許なかったのだ。一応たっぷり持ってきたとはいえ、いつ終わるかわからないので油断もできない。凜はふう、と息を吐いた。四季がある自分の国に早く帰りたい。凜はそう思った。
 
 
 日がかなり傾き、1時間もすれば沈む頃になる。何人かからそれらしい事は聞いたのだが、長老から聞いていた物以上の何かはなかった。たまに子供だった気もする、大人は違う、というのもあったのだが、保留にしている。子供であればまた洗い直しになるから余計面倒なことになる。出来る限りその巨体の人物で探していきたい。というより、巨体の人物の方が信憑性が高いと判断したのだ。
 とはいっても、一番手っ取り早いのは盗みに来るとかする奴を倉庫で待っていることか。だが、長老に聞く限り不定期だし、ヘタすれば数か月滞在するはめになる。学校での生活もあるし、そもそも何故自分がここにずっと滞在しなければならないのか。理不尽すぎる。数カ月滞在とか、絶対避けたいんだけどなあ、と凜は呟いた。
 とりあえずカメラとマイクを見えないよう設置するか、とごそごそとカメラを取り出す。カメラは無線で自動録画録音してくれるし、解析度も高い、夜中でもハッキリ撮れる優れものだ。機械部の部長に大金払って作ってもらったものだ。見た目もすごく小さいので、そう簡単に見つからないだろう。第一、こんな村に監視カメラ何ていう物があるとは思わないはずだ。ベタだがこれが最初にやることだ。
 今日も結局直せなかったエンジンがある乗り物で一夜を過ごすことにした凜は、ある程度生活できるよう作られた乗り物内の電気を点ける。そして、ノートとシャーペンを手に、監視カメラとマイクを置く場所を考え始めた。
 
 
 やられた。
 凜は倉庫を見て舌打ちし、頭を抱える。初日にやってくるとか思っていなかった。
 疑われるのも嫌なので、とりあえず自分じゃない証明を凜はする。持ってきた機械の中も全て見せ、食材の量、内容と、盗まれた内容が一致しないことを説明する。
 一応疑いが晴れた凜は、監視カメラを今確認している。
 監視カメラの録画を確認しながら彼は持ってきた食料を口にする。念のため、二週間分は用意してあるが、早く新鮮でおいしい食事にありつきたい。そう思いながらまたかじる。栄養重視の食品であるため、まずくはないが美味しくもない。
 そんなことを思いながら、彼は監視カメラの映像に違和感を覚える。ん?と思い、一旦映像を止める。今の部分、どこかおかしかった。
 そう思ってもう一度戻し、再生する。
 やはりおかしい。倉庫入口の映像だが、どこかに違和感を覚える。その違和感が何なのか、凜にはわからない。
 違うカメラの映像に切り替える。倉庫の中が見えるものだ。早回しをし、問題となる時間までとばす。録音も再生し、じっと画面を見つめる。
 しばらくは何も起きる様子がない。音も特にこれと言ってしない。ただただ夜の静寂と、暗い倉庫だけがある。
 気のせいか?と思い始めた彼の目に、違和感が現れる。彼はハッとし、食い入るように画面を見つめる。ヘッドフォンの音も、特にこれと言って特徴的なものはないのに、強い違和感を覚える。何だ、何なんだ。やはり、違和感の正体がわからない。でも、明らかに何かがおかしいのだ。それが数分ほど続く。
 次の瞬間、倉庫から物が消える。
「……はっ?」
 思わず声が出る。いやいや、おかしい。今の今まで音がしなかったし、誰もいなかった。注意していればわかったし、下から来たとしてもカメラに死角はないよう配置した。そもそもあの量は一気に消えるはずがないのだ。
 わけがわかんねえな。彼は呟く。嫌な予感がしつつも彼は映像の続きを見る。何にもない倉庫の中。さっきまであったものが、突然消えるとか、ありえない。
 それも突然だった。誰かがカメラの前に立つ。どこから現れたのか、いつの間にか、音もなく。
 コツンコツンという重い足音。その誰かはカメラの方を見る。男だ。ニンマリ笑う顔。目の辺りは髪でよく見えない。
 口が動く。
『残念だったね、星 凜くん』

 

 

 背中が冷水をかぶったかのように寒くなる。今、男は名前を呼んだ。昨日ここに来て、長老にしか名乗ってない名前を、はっきりと呼んだ。
 なんだ、何なんだ。コイツ誰なんだ。彼の手が震える。得体のしれないその男の顔を、凜は食い入るように見つめる。
 男はまたふっと消える。まただ。いきなり現れたり、消えたり、音もしないしおかしい。
「……ん? 録画もうこれで終わりか?」
 凜と長老の映像が流れる。そんなに朝早かったかな?と思いつつ、彼は記録された時間を見る。
「4時25分、か。割と早かったんだな」
 ここの人ら起きるの早いな、と思いつつ、もう一度最初から見ようと戻していく。

 

 違和感の正体を彼はこの瞬間理解した。

 

 

 

 

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