フリーホラゲーを呟く会

ホラーフリーゲームの感想を不定期に呟く。時々痛い小説があったり。

外伝1

「オレの依頼は完了した。あとは知らん」
ぷいっとスーツケースに入れた薬品の山をあたしに渡してそいつはそっけなく向きを変える。たしかにコイツの仕事はこれで終わりだ。何の問題もない。
そんなあたしとコイツのなんともいえないくらいそっけないやりとりには目もくれず、隣の机で立方体のパズルをやっているクズ猫一匹。コイツもあんまり頼りになる奴ではないが、まあ、自分の仕事をやったなら文句はない。
あたしは刀を腰に携え、スーツケースを抱える。そして、ゆっくりと息を吸ってドアを開けた。ここからは、あたしの仕事だ。
いつもの汚らしい裏通り。青い空がうっとうしいほど広がってやがる。その下では今日も、怒号やらなんやらが響き渡り、騒がしい。あたしはスーツケースを強く抱きしめる。
そして、この街の中の風景へと飛び込んだ。
できるだけ風景に溶け込む。そこにいないかのように、何の違和感なくいるように。それがあたしの仕事なんだ。
悪臭が漂う。それはゴミの悪臭でもあるし、外道な連中の腐臭でもある。ここでは強奪、暴力、さらには殺人、なんでもありだ。
特に、今あたしが通り過ぎたこの細い路地裏にお腹をすかしてギラギラと獲物を探す子供たちは、盗みに関しては厄介なくらいうまいもんだ。弱い存在に立っているゆえに、その必死さにはどこか感動する。
あたしはあの子供たちとは違う側にいる人間だ。違う道で、外道と呼ばれるようなことをやって必死に生きている。むしろ、ここにいる、盗みで生きていく子供のほうがまだまだまともかもしれない。
突然、後ろからこちらに走ってくる音がする。確実にあたしを見ている。気づかれたか。あたしは腰の刀とスーツケースを持って素早く路地裏へと入る。あまりここで目立った動きをしたくないのだ。
あたしの仕事は、確実にまともなことで使われることはないであろうこの薬を、守り抜いて、届けることだ。
そう、あたしらがしているのは……人を壊す手伝いだ。


材料の場所の情報集めと薬の運び屋、情報屋のあたし、リナ。
材料を盗み出す泥棒猫、クズ猫イク。
どんな薬でも作り出す薬剤師(?)、きちがいのエルク。

これは、この世界をほんの少しだけ動かしたあの三人の裏で翻弄され続けた子供たちの話さ。