フリーホラゲーを呟く会

ホラーフリーゲームの感想を不定期に呟く。時々痛い小説があったり。

外伝3

観客席から見下ろす。
ゴーグルをした細身の割に筋肉がある男性が一人、自分の倍近くあるであろう男のパンチを頭を伏せて避けると同時に足払い。
そして、腹に拳を叩き込み、顎を蹴りあげる。その戦いぶりに思わず口笛を吹きたくなる。
なるほど、あの男か。
結構特徴的な三人で助かった。アブノーマルの男……。それが第一の条件だった。大体、ゴーグル常時つけているのは、アブノーマルであることが目にでてくる人物であること、つまりは竜族、または吸血族。吸血族は非常に珍しく、あたしの父でさえ、噂しか聞かなく、ここ何年かはその噂すら聞かないと言う。
そんな吸血族にあの奴らが狙うような奴はいるわけがない。
ということは……竜族ってわけだ。
竜族の奴らが狙う奴らで考えてみると三人ほどに絞られ、更に額を聞けば大体奴の特徴に一致する。
もう一人の方はノーマルゆえ探すのは大変だった。大きめの青い目、栗色の髪、17歳の少年。この情報で、一体、何人いると思うんだ。しかも情報が最後に伝えられたのは5年も昔の話。成長期に重なっているため、身長や顔つきなんて、変わってる可能性大。
そして、額を聞いても、軽く100人近く超えるヒットがある。
この人物らを探すのがあたし、情報屋の仕事なんだがな。


そして見つけた。
完全に依頼者の希望の人物らを。
色々聞き、奴らの足跡から目星をつけた。そして、あたしの予想が正しければ、アイツらはここにいるはず。
そして、見つけたんだ。
アイツらを。
正直、よかった。アイツらのこうなった経緯を聞いたら納得した。
あのゴーグルをつけた男、リクベルト=アウル、そして、ノーマルの少年(正直、一瞬女に見えた)ヒカリは、共に行動してる可能性がある。
だから、一番探しやすいリクベルトの方を探せば、ヒカリが見つかる。
理由はあるのだが、その理由はまた、後々わかるだろうさ。
とにかく、この二人を見つけたんだ。これで、一応あたしの依頼は終わった。依頼者にそのことを伝えれば、今回の報酬はもらえる。そう、思い、奴らから背を背けようとした。
「ラグちゃーん、おいてっちゃうよー」
自分らが情報を売りつけられようとしていることに気付いていないだろうあの少年は、誰かに声をかけている。
ラグ……聞いたことない、そんな名前。あたしが調べた情報の中に、ラグという奴はいた覚えがない。
気になり、ちらっと奴らをみる。
黒い髪をツインテールにした10歳ぐらいの少女が、ぬいぐるみを抱き、リクベルトとヒカリに走り寄る。紫雨色の瞳、いかにも大人しそうな子供だ。
リクベルトは少女に少し呆れながらも行くぞ、と言い、ヒカリは少女に手を差出し、少女の手を引いていく。
その様子は、家族のようなものを連想させる。
「……ふーん……」
あたしはその光景に目を細め、そして、今度こそ完全に背を向ける。
この少女の存在、もしかしたら、いい報酬になるかもな。


そうして、あたしはこの情報を依頼者に売った。依頼者にあの少女の情報をちらつかせる。興味はなさそうで、いいと言う。
チッ、つまんねえの。あたしは心の中でそうつぶやき、依頼者から報酬を受け取る。その後、その依頼者どもは返り討ちにされたらしいが、そんなことあたしが知ったこっちゃない。大体、アイツらの強さなんてあたしの情報から言うと、ヒカリは知らないが、リクベルトの方はかなりのものだ。そう言ったのに、身の程も知らず、頭も使わずに行った方が悪い。
だから、そんな依頼者の文句なんて聞く余地も無し。
あんまりにもうるさくて、エルクがすんごい無表情でメスを投げて銃を額に突き付け、無表情な声でうるさい、って言っていたときにはさすがに依頼者に同情したが。


そんなあたしの所に金髪のチャラい感じの男と、明らかにノーマルではない、猫のような男がやってくる。
そして、言うんだ。そいつらの情報と、少女の情報をくれって。
奴らに情報を売りつける。そして、奴らはいい笑顔であたしを見て言う。
「なあ、あんた、その少女を攫ってきてくれないか?」
「……報酬、はずむならな」
あたしはそうやって答えてやる。


歓声が沸く中、あたしは踵を返す。
アイツらの存在は確認完了。他に宿のことや、その他細かい事まで全部、見させてもらった。
あたしは奴らに向かってこう伝える。
「明日、決行」




To Be Continued……