フリーホラゲーを呟く会

ホラーフリーゲームの感想を不定期に呟く。時々痛い小説があったり。

Record Of A War In Cross World  7話

先輩たちが僕におやすみーなどと声をかけてくる。この先輩たちは確かこっちの方向に部屋などなかったはずだ。わざわざご苦労なことだ。いちいちここまで来るとか、どんだけなんだ、暇人。
いつものように適当に心の中で悪態をつくものの、僕は笑顔を崩さずにおやすみなさい、とだけ声をかける。さっきお風呂に入ってきたから髪は濡れていて、正直こんな先輩たちに気を遣うより髪を早く乾かしたい。口にも表情にも出さないけれども。
僕は自分の部屋のドアノブに手をかける。
「……」
ドアが開かない。何かが邪魔でつっかかっているようだ。僕は何回か力任せにガっとドアで邪魔な物をどかしていく。頭の中にあの剳乱とか言う上司を思い浮かべて、あの時の不満を存分にこっちの力に変えた。
あの食えない上司の相手とかマジだるい、うざい。僕は心の中で舌うちと存分に悪態をつきながらドアをガンガンやる。
そう思っている間に何とか入り込む隙間ができる。リクほど僕は筋肉むきむきじゃないし、体格もそれほど大きくないからこれぐらいあれば十分。するっと入る。
部屋は電気がついてなくて暗いし、足に何かあたる。一歩踏み出せば、きっとどこを踏んでも、足の下に何かありそうだ。
ため息をひとつついてドアの横にあるスイッチに手を伸ばしてつける。数秒の間のあと、天井の灯りが部屋を明るく照らし出す。その下には、ひどく散乱した部屋と、机に突っ伏したまま動かないリクの姿があった。
僕はいつもの調子であーあー、と言いながらリクに近づく。リクはぴくりとも動かず、そのまま突っ伏したままだ。枕は破け、中身が散らばっている。あたりにあるもの手当たり次第に投げたのがよくわかり、もう様々なものが床一面に散らばっている。コイツがキレたらめんどくさいなあ、と思いつつ、僕はまたため息をついてその場を離れる。そして、やかんに水を汲んで沸かし始める。
トントン、とドアをたたく音。恐らく、コイツが暴れた音のうるささによる苦情か何かだろう。僕は髪を軽くタオルで拭き、指で軽く整えてからドアをつっかえていたものを足でどかし、いつもの愛想だけはいい猫かぶり笑顔を浮かべて、はい、とドアを開ける。
隣の部屋にいる僕と同じ年の二等兵だ。僕のこの猫かぶりな笑顔に一瞬戸惑って、そして、あの、と話を切り出す。後ろのこの惨事が見えているし、リクのこの後ろ姿も見えている。コイツは情報部だし、何故こうなったかきっとわかってはいないだろう。
「ああ、ごめん。リクがうるさかったね」
「いや、だ、大丈夫?何かあったの?」
「んー……わかんない。さっき帰って来たらこうなっていたから。ちょっと落ち着いたみたいだし、聞いてみるよ。
ごめんね、リクに気を付けるよう言っておくよ」
さも申し訳なさそうに謝っておく。そいつは僕の心配をまだしているから、とびっきりの笑顔で大丈夫、と答えておく。いいから、こっちに首つっこむな、上司のあの言動にむしゃくしゃしているし、リクの奴はうごかないし、早くこのうっとうしい表を解除したいんだから、と心の中ではつけくわえてやったけど。
まだ何かありそうな感じだったが、それじゃあ、と言ってそいつは離れようとする。おやすみ、と笑いかけたあと、ドアを閉める。そして、笑みを消した。
ちょうどお湯が沸き、火を消す。そして急須にお湯を注いだ。
しばらく経ってから湯呑みにお茶を注ぐ。そして、リクのいる机に持ってきてやった。ことっとリクの隣にお茶を置く。
「……いい加減起きたらどうよ、リク?」
「……」
「いつまでいじけてんの、女々しい」
うっせえな、とドスのきいた声で言われるが、正直そういうのには慣れているし、ここまで暴れ、僕がここまでやってやったし、僕の場所がなくなるくらい散らかしたんだ。コイツの性格上、これぐらいで暴力を振るうわけがない。
だから軽く小突く。リクは顔をあげ、不機嫌そうに見ている。
「僕だって機嫌が悪いんだから、あんまりいじけるのやめてくんない?君の機嫌の悪さで僕の唯一の癒しである君への悪態がつけないじゃないか」
「……情報塔の天使なんてこんなもんだぞ、先輩たち……」
「天使が無償で笑顔ふりまけるかと思ったか、甘いぞ、その犠牲に君がなっただけだ、黙って悪態突かれてろ」
「理不尽なこと言ってんじゃねえぞ、天使の面した悪魔が!!」
ああ、このすごくイラッとした顔を見るだけであの上司の奴の言動でのイライラが解消される。ここに来てから、部屋に入ってからのこの癒しがたまらない。今度も適当な理由つけてコイツと同室になろう、うん。できるだけ僕の本性知る人間は少ない方がいいしね。
まあ、そんなことはさておき、僕は頬づえをつき、リクに聞く。
「ここまで暴れた理由は?」
「……」
「バロムとか言う人と組まされた?」
リクの肩がわずかだが動く。ああ、やっぱり、と僕は苦笑いする。こいつといるときだけは本当、素直に感情が出せる。コイツなら安心していいからな、そんなくだらないことで僕の印象を落とそうとか考えないし。
「だから、ウィル大将の部屋に乗り込んだ、と」
「……何で知ってる」
「見ていたから」
しれっと答えてやる。正直あそこの部屋は多少遠かったが、視力はいいもんで、ばっちり見えた。向こうから見られているとかは一切考えなかったけど。
リクはチッと舌打ちをする。さすがに中身までは聞いてはいなかったが、コイツの性格上、せめて理由だけでも聞きに行ったのだろう。ウィル大将に見事なまでに色々かわされてきたみたいだけど。
僕は苦笑いを浮かべたままやっぱりとつぶやく。
最初の難関にぶち当たってるリクを見ると、思わず笑みがこぼれる。こいつは一体どうするつもりなのか、答えを聞きたくなる。そして、弱音を吐くコイツに冷たく色々言い放ってやるのが楽しくて仕方がない。
心配なのは本当だ。コイツがいなくなったら一緒になって気が置けない奴作るの何週間ぐらい必要なのか……めんどくさいったらありゃしない。
「全部口にするのやめようか、ヒカリ」
「あ、聞こえてた?」
「この距離で聞こえねえわけがねえだろ、バカ野郎」
不機嫌なのがますます不機嫌になる。本当、見ていて飽きない奴だ。
リクはぶつぶつと文句を言い始める。こうなったら長いのだが、あいにくこの手の愚痴は聞くのが大好きだ。もうひたすら聞いている。
だが、まあ、思ってはいたけど……本当、前途多難コンビだ。リクがここまで荒れるぐらい、それはそれはひどい組み合わせだったんだろう。リクの文句から読み取れる。
「あんな雑な理由でペア組まされて……合わないペアなんて互いの足を引っ張りあうだけだ……」


合わないペア、か……


「最初から合っていたら練習も何もいらねえっつうの」
僕はその言葉ににこりともせずにリクに言い放った。互いの足を引っ張ろうが、なんだろうが、合わそうとせずによく言えるよな。僕はその時だけからかうつもりもなく、ただ純粋にむかついて言葉をリクに放った。







まただ。
オレは舌打ちをする。またコイツが先走りしやがる。オレはおい、とバロムに声をかける。声をかけるなと言わんばかりにバロムはオレを睨む。睨むな、本当。
「先走りすんな。他を置いて行ってる」
「遅い方が悪い」
「だからな……!!」
「我に話しかけるな、腰抜け」
はらわたが煮えくり返りそうなぐらいむかつくその態度。なんでわかんないのかさっぱり理解できない。集団で行動することがわかっていないのか、こいつは。
「先走りすんな、って言ってんだろ……!!」
「はん、我に待て、と言うのか?わざわざあのできそこないたちのために我が何故合わせなければならんのだ。くだらん」
「少しは考えろ、アホか、貴様は!!」
ああ、まただ。コイツの態度がいちいち気になって仕方がない。少しくらいなら我慢しようとはする。だが、少しのことがだんだん積もってきて、本当に少しのことでも気になってくる。
ダメだ、本当にコイツといると疲れる。
ペアでやるゆえに訓練内容も厳しくなってくる。体力的な面での厳しさとともにこのイライラが溜まりにたまって、体の調子すら軽く悪くなっている。そんなこと言ったら今度は軟弱者なんていう言葉が加わりそうだから言わないが。
教官に怒鳴られ、オレは口を閉じる。
心の中はコイツに対しての不満でたらたらだ。ヒカリに昨日言われたこともあって少しは我慢しているつもりだがな。
だが、やっぱり止められない。コイツに付き合いきれない部分があんまりにも多すぎて、イライラがたまっていく。ガリッと気づけば親指の先を噛んで憎々しそうにアイツを見ている。
ああ、くそ、腹が立つ。
わからない。
コイツの思考が全く読めない。
何でここまで協調性がないのか不思議でたまらない。
ああ……



何を理解すればいいんだ
コイツの何を理解できればいいんだ


誰も答えを教えてくれない


オレの親指から血が流れ、地面に落ちていった。





To Be Continued……
そして、オレもあんまり話が進まない回だったorz
でも楽しかった←

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