この世界に
世の中残酷なこと多いよなあ。
いやあ、別になんてことはないんだけどさあ、ふっとね。
ちょうどいいや、君ら、暇なカミサマのお話を少し聞いて行ってくれる?
オレはさ、12歳の時まで別に普通の人間だったわけよ。うん、本当に普通の。普通に田舎の島で、兄貴や妹と遊んで、学んで、笑って、両親に可愛がられ、時には叱られた。
そう、オレ、すっごく愛されてた。
でも、当時の神様、これがまた傍若無人でさあ、もう、なんていうか、やりたい放題ってわけ。気まぐれでウイルス作ってばらまくし、噴火突然起こさせるし、地震、雷、雪崩、いっぱい起こしたね~、不自然な程。
今なら少しわかるけど、暇なわけだよ神様って。んでもって、ずっと一人だから精神的に随分とおかしくなっちゃったんだと思うよ。
まあ、そんな話はいいとして、オレは、12歳の時にふっつり記憶が途切れた時があった。んで、何が起きたと思う?
家族殺し
その上、快楽殺人を何度か起こす大悪人
笑っちゃうでしょ?
だってオレ、あの日、ただ単に森に遊びに行っただけだよ?
家族のためにいっぱいいっぱい木の実拾っていたんだよ?
ふつって切れて、気づいたら大悪人?
子供が?
おかしいだろ、そういうのって。でも、大マジなんだ。オレが家族殺したって、快楽で殺人をする気狂いだって、危なすぎるって。
涙流してくれるの?ありがとうね。でも勿体ないよ。オレが世間でいう悪人って言うのは本当だからさ。
家族を失った、家族をけなされた、オレは恐れられ、憎まれた、人の悪意にさらされた。
苦しかった。
悲しかった。
憎かった。
寂しかった。
頭がパンクしそうなくらい。
いいや、そんな言葉じゃ安っぽくて笑ってしまう。とにかくもう、逃げ回って、苦しみ回って、声も涙も枯れるくらい泣きまくった。
どうすればいいかわからなかった。
夢なら覚めてしまえと何度も何度も何度も願った。
でも夢じゃなかったんだ。現実は、オレを心を抉るかのように存在していたんだ。
そんな傍若無人な神様のやり方を変えるために、大精霊たちはオレを選んだ、オレは選ばれてしまった。
そして、そんなオレを壊すために神様はその時オレが持っていた全てを壊したんだ。オレを壊せないから、壊れる方向にへと向かわせたんだ。
まあ、望み通りオレは壊れていったよ。
本当にもう、無理。
だって、オレ12歳の少年だぜ?神様とか、大精霊とか、もうおとぎ話の世界だもの。そんなことのために何でオレは、オレの家族は、壊されなきゃいけなかったの?
何度考えてもわからないね。いいけどさ、大精霊様方はそのことを口に出すといつも黙る、本当に申し訳ないと思っているし、後悔もしていなきゃ、あそこまで苦しそうにしていない。いつか終りが来るオレと違って大精霊様たちも大昔、同じような思いをして、長い時間を生き、そして、これからも途方に暮れるほどの長い時間生きるんだろうから。ずっと後悔も、その苦しみも知り続ければいいんだ。
おっと、恨み言を吐いてしまったな。
すまない。
そんで嫌われ続けたオレの元にある人物が来たんだ。
そいつの名はネレ。
白い髪の吸血鬼、そして、情報屋、そして、オレの恩人。
そいつはあんまりお人が好くなく、人を利用し、陥れる達人だった。そりゃもう見事にはめていたな。
きっとオレも面白いってことで拾ったんだろうよ。アイツは誰にも言ったことがないのに、オレが、オレの意識は何も知らない、何もしていないって知っていた。恐ろしくなかったと言ったらウソだ。すごく恐れた。でも、頼れた。
顔を晒せないオレに顔を晒さない方法を教えた。オレに裏世界を教えた。目をそむけたくなるぐらい、どろどろで歪んだ世界だったけれど、今知らないことは先延ばしになるだけ、いつか知るって言って教えた。結局、それは正しくて、オレは裏のドロドロに慣れた。これが結構いいことだったかもな。
そして、ネレは、オレを自分の娘と同等にオレを扱った。ネレの嫁さんも、ネレの娘も、オレを受け入れ、愛してくれた。
嬉しかったよ。
もう、嬉しいだけじゃ言えないくらい嬉しい。
でも、虚しさは全然消えなかった。孤独は一層ひどくなった。
離れたい、でも、離れる勇気はない。彼らの善意が怖い、彼らの愛が怖い。それが偽りじゃないと知っているのに、悪意より恐れた。
どうすれば解決するのか、どうすればいいのか、もう、何もかもどうでもよくなっていったんだ。
ある日、自分の名前も忘れたある少女に会ったんだ。