NORMAL ABNORMAL 1章 5
「ラグ」
毛布にくるまり、スース―寝息を立てているラグ。ヒカリのケガやらゴゼンのあの攻撃やら大変だったっつうのに、のんきなもんだ。
というか、ラグが誘拐されたからこんなことになったんだが……。
「ラグ」
「……んー……。リク……さん……?」
やっと目を覚ますラグ。何か乱暴なことされた様子はない。それはよかった。
ボーっとし、あたりを見回す。そして、首をかしげる。
「リナさん……?」
「……リナ?」
「もふもふしたしっぽのお姉ちゃんです……」
アイツら以外にももう一人いたのか……。まあ、何もされてなくて本当によかった……。
オレはラグを見て言う。
「……ラグ、どうしていなくなった?」
「リナさんのしっぽ……もふもふしてました……//」
「ラグ、ちょ、話を……」
「もふもふしていたので、ずっと触ってました……//」
「ラグ……まさかとは思うが……リナとか言う奴についていったのか……?」
「しっぽもふもふ……」
ラグううううう!!!
オレは、そんなラグを怒鳴り、10分ほど説教することになった。10分も説教すると、ラグはしゅんっとして涙目になっていた。
こうしてオレは、「もふもふについていくな」という奇妙なルールをラグに教えることになった。
「リク……さん……?」
「なんだ?」
「……あの、怒って……ますか……?」
「……怒っている」
ラグはしゅんとしてぬいぐるみを抱く。
ラグに対しては怒っている。心配かけさせるし、変なもののせいでヒカリはひどいケガをするし、それに……
「大会、ダメになったから稼ぎ直しだ」
ちょ、そっち? と笑うヒカリと、ごめんなさい、と謝るラグ。あの程度の連中なら、オレにとって優勝くらい軽いもんだった。
「お兄さんも出たかった~」
……隣でのんびり言うコイツにさえ当たらなかったらな。
100万ベルを逃し、ヒカリが負傷したのは少し痛い。
「ゴゼンさん!!」
どうするか考えていたところ、一人の少年がこっちにかけてくる。小柄で、金髪でネコの様だ。眼鏡と違って可愛い感じだが。
「わあ、マオ君♪」
「ゴゼンさん、探しましたよ! もう、いきなりいなくなるから、クライさん怒っていますよ!!」
ごめんねえ、と言いながらゴゼンはマオとかいう少年に近づく。少年はオレらを見て、ぺこりと頭を下げる。そして、ゴゼンの手を引いて走り出した。
『あぁ!! ゴゼンさん、ロングソードは!?』
『忘れちゃった☆』
『~~っ!! もうっ!!』
「「「……」」」
オレは遠目でゴゼンを見る。
少年と、大人の男と、気の強そうな少女。なるほど、ゴゼンが言っていたイメージ通りだ。
オレはゴゼンから目をそらし、歩き出した。
「行くぞ」
「え、あ、ハイ!」
「リク、歩くの速いよ!!」
その後ろから、2人が追いかけてきた。
『……ゴゼン、どこに行っていた?』
『リッ君とこだよ。あの人たち、おもしろかったよ』
『ったく、消えるなよな、っとに、バーカ』
『アハハ、ひどいなあ、バカって。
……でも、まあ……
あの三人にはまた会いたいなあ』
NORMAL ABNORMAL 1章 ~FIN~