フリーホラゲーを呟く会

ホラーフリーゲームの感想を不定期に呟く。時々痛い小説があったり。

マリオネット 合作3

2の続きです


エルク
痛みがゆっくりだがひいてくる。これで全部。短くて長い時間が終わる。
相変わらず、あの自分は何ていうか…気味が悪い。あれが「嬉しい」と思えた最初で、おそらく最後。だからこそ気味が悪いのだ。
記憶は何も変わらない残酷さで、ここにあった。
死にたい。
何度昔の自分はつぶやき、死のうとし、死にきれなかったんだろうか。数えるのももうめんどくさい。
昔のことなんだ。そうつぶやいても、オレは突然、思い出す。あの地獄を。
そして、味わう。あの痛みを。
誰かにすがることなど考えたことなどない。すがれるような奴など、誰一人として会ったことないんだから。
自分の記憶が、自分の心が、自分を責める。決して救われることなんかない。
死んだとしても、欠けた魂では何になれることはなく、完全に消えるまで、救われやしない。また、この痛みのループ。

「僕が助けてあげようか?」

耳障りな声が、すぐ耳元で聞こえる。それがどういう意味なのか。
「…めんどくさいものじゃなかったら知るのも悪くない」
気付くと意識は肉体に戻り、肉体の口からいつもの感情なんてない声でそう目の前にいたあいつに言っていた。


剳乱
エルクくんが目を覚ました


「あ、起きたんだ。おはようエルクくん♪」

とりあえずトラウマとの格闘は終わったらしい

「ふふ…。面倒くさくはないよ?だってすぐ終わるから」

笑んでエルクくんの額に指をあてた

「言葉の通り君を助けてあげる
君を蝕んでる痛みから…ね」


エルク
オレはそいつを見つめる。
意識と肉体を切り離すのが少し遅かったらしく、少々痛む。が、まああのまま肉体の痛みを思い出すよりは遥かに耐えられる。
…というより、これくらいは割と普通なのだが。
「…オレを蝕む痛みを、ねえ…」
つぶやき、考える。別にそれが何なのかわからないわけじゃない。むしろ、ハッキリしすぎているのだ。
考えるって言っても、何かはわからない。興味があるのは確かだが。気持ち悪さは未だにこいつから漂ってくる。それが…なぜか嫌で、拒絶したい。
また矛盾。参ったな…。オレは小さくため息をついて、無言でうなずいた。


剳乱
エルクくんは少し間を空けたあと無言で頷いた

「ふふっ、いい判断だね
何事もまずはやってみないと♪」

正直断られるかなぁって思ってたけど
やっぱりあの記憶からくる苦しみは相当辛いらしい


「やり方は簡単。君は自然でも薬でも物理的にでも何でもいいから眠って、そして起きたら君の願いは叶ってるって訳♪
僕がこれから君にするコトは結構集中力が要るし君に意識があるとやりづらいんだ」


僕は懐から瓶をとりだす。睡眠薬だ


「薬が一番楽でしょ?まぁ僕から貰うのが怖いなら自前のでもいいけど」


相変わらず彼の表情は変わらない

けれど、コレをしたら彼の何かが変わるのだろうか?


エルク
わかった。
それ以外にいいようがない。
意識をなくせというのなら、薬を使わなくても別に意識がないくらい深く眠ることだって。
これで救われるだとか、少しも思っていない。実験をするかのように、ただ客観的に見てるだけ。
オレは目を閉じる。今度は深い深いところで、ゆっくりと意識をなくしてく。
何かやっているのは知ってるけど、もう考えず、その深いところに存在する闇に身をゆだねた。


剳乱
「自分で寝れるんだぁ」

どこまでもこの子は僕が見習いたいくらいに器用なようだ
僕なんて普段ですらろくに眠れないのに

少しすると本当に彼は眠った。寝顔は普通の少年で
なんだか不思議な気分になる
というか具体的に何をするかもリスクも聞かない所が肝が座ってるというかなんというか……

「始めよっか」


僕は彼の額に手をかざして意識を集中させる

べつにかざす場所なんてどこでもいいんだけれど
頭とかの方がらしいでしょ?

少しすると僕は真っ暗で欠けてしまっている哀れな彼の魂(なか)で先程みた記憶達を見つける
記憶はずっと同じシーンを繰り返しリピートしていた。


「見つけた」


エルクくんの身体が淡く緑に光る
するとその光はエルクくんの頭上に集まっていった


そして、その集まった光を僕は掴みとる


「くすくす…」


手を開くとそこには野球ボールサイズの、エルクくんの瞳と同じ緑の丸い鉱石があった

「あはは、こんなに大きいだなんて、よっぽどだったんだねぇ」
鉱石を見つめて笑う

これはね、“記憶の石”
つまりこの石にはエルクくんの記憶、それも
エルクくんが消したいくらい要らない、辛い記憶。

簡単に言えば僕はその記憶を彼から奪ったってこと。勿論全てを奪ったら生活出来なくなるし人格崩壊するから
虐待された っていう事実は記憶に残ってるけど
何を具体的にされたかっていうのは無いわけ
容器はあるけど中身がないって感じかな?

だから、身体の刻まれたものを見ても何故あるのか分かんないの。
まぁ虐待されてた事実は記憶に残るから推測は出来るかもしれないけど
された記憶もないから痛みには至らないって訳

記憶喪失みたいに“思い出す”こともない
だって思い出すべき記憶はこの鉱石の中なんだから


少なくともこれで彼は痛みを思い出して苦しむことは無くなるってこと


彼が起きてからどんな反応するかは、彼が起きるまで楽しみにしておこう


エルク
深い海。
静かに沈んでいく己。
不思議と息苦しくもなく、逆にその中はとても心地がいい。
暗闇に落ちることに、何も思いはしないし、ここまで気持ちがいいなら悪くはない。
ゆっくりと海底に着く。暗い。でも、不安にはならない。息をゆっくりと吸って、吐く。
冷たい水は、さっきの記憶による痛みの熱さをゆっくりと冷ましていく。それはとても…気持ちがいい。
夢とも言えるこの中。何かされているのはわかるが、何されてるかはわからない。ただ目を閉じ、耳を澄ませ、呼吸をゆっくりとしているだけ。
「もういいよ」
そう言いたげに無くなる誰か。オレはその暗闇で目を開ける。そして上に向かって泳ぎだす。

……。
痛みがない。あれほどの辛くて、苦しくて、たまらなかったあの痛みが。
全く見当たらない。
痛くて苦しんだことも、覚えている。でも、なんで?と言われたら、わからなくなる。そして、それすら…なかったかのように思えてくる。
なるほど、確かに消えるものなんだな。冷静に考えれる自分が、気持ち悪い。
オレはそいつを見つめる。礼なんて言わない。これで何をしたかはわからないが、ハッキリとしてることがある。

オレは
痛みと苦しみがなくなってしまった今
なぜ生きてるかわからなくなってしまった。
それは
オレの記憶は皮肉なことに
痛みと苦しみでしかできていないに近く
あんなにハッキリ見えた自分が
見えなくなったのと同じことだった。

「どこまでも救われないな」
どっかの誰かがそう呟くのを黙って聞いてるしかなかった。


剳乱
彼は目を覚ますと何を言うでもなく僕を見つめた

別に僕も彼を利用する口実に助けると言っただけだからいいんだけどね

だってなかなか見れないでしょ?
記憶の大半が痛みでできた男のその記憶を抜いたらどうなるかって


そして彼はなんとなく
無表情というよりぼんやりとした顔をしていた
この瞳(目)は生きる意味をなくしたものの瞳(目)だ


くすっ

僕は笑った


「生きる意味…なくしちゃった?
ふふっ、痛みが辛くて耐えきれなくて無くしたいと願い、叶えば救われるどころか……
あはは、君って

どこまでも救われないね」

僕は懐に入った鉱石をエルクくんに見せなかった


続く……