フリーホラゲーを呟く会

ホラーフリーゲームの感想を不定期に呟く。時々痛い小説があったり。

マリオネット 合作2

マリオネット 合作1の続きです。


剳乱
彼が


一瞬で、しかもちいさな笑みだったけれど
確かに彼は僕にメスを突きつけられて


笑った

あと、何かを言った気がしたけど僕には聞こえなかった

「ぷっ…、あははははは!!」
声を挙げて僕は笑う
べつに彼が笑ったことが可笑しかったとか
そんなんじゃない

ただ

彼の瞳があまりにも
幼い少年のようにおぼろ気で壊したくなるくらいか弱かったんだ

「君って人形はなんて面白いんだろう
君は、一人になるのが怖いんだね、いや、傷つくのが、傷つけられるのが、拒否されるのが、否定されるのが、差別されるのが、認められないのが、愛してもらえないのが、愛せないのが、裏切られるのが、避けられるのが、異質なことが、
怖いんだね」

そう言って僕は笑みを浮かべ、メスをしまう。
軽く触れただけだから血は出ていなかった

今の彼は僕の“大好きな瞳”をしていたから、しまっておかないと
思わず殺してしまいそうだったからだ


「あれ?気分悪いの?大丈夫?」

彼は何故か凄く具合が悪そうだった


エルク
耳障りな笑い声。
ある1人の少女と、オレが軽蔑する奴らの声と重なって聞こえてくる。ひどくなっていく耳鳴り。頭痛はもう、ハンマーで叩かれるかと思うぐらいだ。
誰かに似ているのだ、この笑顔が。嫌な誰かに。じゃなきゃ…ナンデアイツラヲ思イ出スンダ…。
怖い?怖いって何なの?わからない。怖いってどういう感情?わからない。わからないから…ただ気持ち悪い。
オレの顔を見るそいつ。薄っぺらい笑みを相変わらず浮かべ。
苦しくなる。気持ち悪い。頭が割れそうだ…。
忘れていた記憶達が突然、蓋が開いたかのようにまとわりついてくる。何と言えない気持ち悪さが胸にせりあがってくる。
息は浅い。苦しい。
「…気持ち悪い…」
よくわからないこの異常の苦しみに耐えながら、やっとのこと、オレは声を絞りだす。もう考える余裕なんて、今のオレには皆無に近い。


剳乱
「…気持ち悪い?、どうしたの??」

どうみてもエルクくんは具合が悪そうだった
息は浅いし苦しそうで、仕草から頭が痛いというのも伝わる
不調を訴える声も絞り出したようにか細かった

「ちょっと横になりなよ」

そう言って倒れられても困るので、半ば無理やり横に寝かせ脈を計ると、思った通り脈は弱い。
どうやら僕はかなり精神的に彼を追い詰めてしまったらしい。
思ったより精神面は弱そうだ

けど、とても興味深い。


「ごめんね?嫌なコト思い出させちゃった……?」


僕は彼の頭を巻いてある布越しに触る

そして、意識をすこーしだけそこに注いだ


何をするのかって?


ちょっとだけ彼の“記憶”を覗くだけだよ


エルク
記憶はまとわりつく。嫌なところだけ、鮮明に。まるで、今現在やられているかのように。
不意にバンダナ越しに頭に触れられる。また殴られるかのような痛みが襲ってくる。
そして、限界を感じたオレは、意識を無理矢理落とす。この記憶にまとわりつかれたこの体は、もう痛みに耐えられないだろうから。
記憶を肉体から切り離した。意識だけ、この痛みを思い出す。痛いという記憶だけだから、まだ耐えられる。肉体がまともに痛みを思い出したらたまったもんじゃない。
鋭い痛みが全身を襲う。何か鋭く尖ったもので体のあちこちが削られていく感覚。
削られた部分から赤い液体が流れ、熱さが後から襲う。痛いなんて表現できないくらい。
突然、焼かれるかのような痛みと臭い。
ああ、そうだ。オレは意識を失うこともなく、呪いの言葉を刻みこまれた。背中から、胸から、腹から、足から無数に。消えることなんて二度とない。
肉体から意識をどうにか切り離しても、この痛み。こんなのがまた肉体に返ってきたらたまったもんじゃない。
少しずつ少しずつ、体を削られていくこの感覚は、今になってもひどく鮮明に覚えている。薄れているはずの感情が、また蘇る。
痛い
痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい痛い痛い痛い痛い痛い苦しい…
この気持ち悪いループを味わい続ける。
そして、最後に見えたのは、痛みも苦しみもない。
ただ、倒れている人々ととても嬉しそうに、狂ったかのように笑う、幼い誰かだけ。


剳乱
目の前の光景はなかなかグロテスクだった

まだ小さい子供が虐待と呼ぶのもためらう程に酷い虐待をされている

あぁ、この子がエルクくんか

僕は彼の記憶を視てるだけだから触れたりとかそういうのは出来ない
だから傍に近寄って彼を見ると
幼い彼は身体中をぼろぼろされても必死にそれに耐えてる様子だった

昔の記憶を探るのには本当はもう少し集中力が要るのだが、今エルクくんはそれを思い出してるみたいで
覗くのはとっても簡単だった
……どうやら観察してみるに、エルクくんの見た目がまず問題らしい
真っ赤な髪と深緑の瞳は“悪魔”だと罵られている
僕は血みたいで好きなのになぁ


その後も
エルクくんは色んな虐待をされていった
自分が出来ないのが少し残念だけれどその様子を見続ける

そして

ついに彼に

呪いの言葉が刻まれた


不運なことに彼は意識を失うことも出来ずに
身体中にそれを刻みこまれている


成る程、どうやらコレが彼の今の精神と人格の形成に大きく影響したらしい


これぐらいかな?と自分の意識を離そうとする


でもその時だった


目の前に大量の死体が現れた

一瞬、“自分の記憶”かと思ったけれど違う。
間違いなくエルクくんの記憶だ

そして

大量の死体の真ん中で
エルクくんがそれはそれは嬉しそうに、高らかに笑っていた
まるで狂ったみたいに

ひたすらエルクくんは刃物らしきもので死体を刺している

本当に嬉しそうだ

よっぽど殺せたのが嬉しかったのか、それとも精神が狂ったのか
まぁ、今の彼を見てると後者っぽいけど

僕も大量虐殺というのをやったコトがあるけど
人からはこんな風に見えたのだろうか?


エルクくんは非常に大きな傷とトラウマを持っているらしい

それが分かってとりあえず満足したので
今度こそ意識を切り離した


「これは酷い♪」

意識を戻すとどうやらエルクくんはトラウマと戦ってる途中らしく
まるで重症患者のように汗を流して苦しんでいた

鎮静剤でも打とうかと考えていると、いつの間にか汗が引いていく

「器用だなぁ、肉体切り離したのかな?」

やったコトは察しがつく
僕には記憶を読み取れても感情は読み取れない
だから今エルクくんが何をどんな風に苦しんでるのかは分からないけれど
記憶 というものが彼を蝕んでることは容易に分かった


「苦しい?エルクくん、痛い?」
彼に届くのかも分からない問いかけをする

きっと今彼は痛みのループに焼かれてるのだろう

「痛い?辛い……??」

僕は彼の耳元で囁いた


「僕が助けてあげようか?」



続く……