フリーホラゲーを呟く会

ホラーフリーゲームの感想を不定期に呟く。時々痛い小説があったり。

とある奴らの騒動記2

インターホンを破壊された。


冒頭からなんてぶっとんだ文が出てくるんだろうか。インターホンとかあんま使う奴もいないし、正直いらねえなあ、とは思っていたが、まさか、こんなところでぶっ壊されるとは思っていなかった。
えーっとな……。とりあえず、状況を整理しよう。
インターホンが鳴った。
次の瞬間、何かが壊れる音がした。
……うん、何度考えてもおかしいよな、この状況。インターホンが鳴るまではわかるとして、なぜ壊れると言うのだ……。
あまりにおかしな展開についてけなくなったオレの耳に、ドンドンと乱暴にドアを叩く音が響き渡る。アイツらか、とオレはため息をついた。アイツらの仕業というのなら、納得できる。
オレはドアの前に立つ。ドアノブに手をかけ、開けようとした。
「お邪魔しまーす!」
……本当に邪魔しに来た連中によって、ドアが吹き飛ばされ、オレに見事にヒットしたがな。


「エルクー、お茶くれ、お茶」
「お茶請けくらい出してくださいよ」
「しばくぞ、てめえら! てか、まず謝れよ!」
「えー? なんで?」
「三十分前にお前がしたことを殴って全部思い出させてほしいのか?」
「まあ、いいじゃないですwww」
「どっこもよくねえからな!? あと、何の違和感もなく人の家の棚から菓子を出してんじゃねえ!!」
やばい、こいつら突っ込みが追いつかねえ。
茶と金が混ざった髪をした赤目の眼鏡と白いローブを着た銀髪青目の奴。コイツらは本当、やりたいことやってくれる。
「だから、棚を漁るな!!」
「兄貴、クリームどら焼き発見」
「それオレのだって!! お前ら、自分の家に帰れよ、不法侵入者!」
「ダージリンないのですか?」
「オレ、コーヒーで」
「お前らガチで帰れえええええ!!」
なんでここまで人の家を好き勝手できるのか、正直不思議で仕方がない。


ここは人の世界では生きられないだろう人たちが集う場所。
この場所にたどり着く方法を知る者はあまりいないだろうし、また、知っても興味本位でこれるような場所じゃない。
本当、そんな簡単には来れない。
だが、そこに来る人間がいることは確かだし、現にここに住んでいる奴らがいる。
人間離れしているのは言うまでもないだろうが。
オレはエルク。
基本的にこの家に住んでいる。
薬剤師というか、魔法使いというか……基本、薬草を摘んだり、魔法の力を借りたりして、薬を作っている。
んで、赤目の奴がイン。
青目の奴がネレ。
ネレが兄貴で、インが弟。竜とヴァンパイア、わずかに人間の血を持つ兄弟だ。兄貴の方はヴァンパイア寄り、弟の方は竜寄り。
見た目は25,6ぐらいだが、実際、両人とも2000歳を超える爺だ。大昔に色々やらかした奴らだが、今は毎日のようにオレのことをからかいに、且つ、邪魔しに、怒らしに来ている超絶迷惑な暇人だ。
その暇人の相手をするオレの身にもなれってんだ……!!
ただ、不運にもコイツらは役に立った覚えはないが、オレの育ての親。
赤い髪と緑色の目のせいで虐待されたオレをネレが見つけ、保護してもらったのだ。
今でもあの血のつながりがあるだけでもうっとうしく思うあの家族が生きているのは癪だが、あそこにいたら、少なくとも、今、ここで好きなことをやっているわけでもなく、つい殺してしまったかもしれない。
ああ、暗い話はやめよう。
そんなわけで、コイツらは育ての親で、実際に進学とかでは世話にはなった。
……。
「だから、帰れええええええ!!!!!!」
……人の家でなぜこんなにも図々しくできる奴が、なんでオレなんかを拾ったのか未だに不明。
そして、棚にあったお菓子を全部食う育ての親ってなんなんだ……。




にゅるっという音が聞こえた。
するすると後ろに忍び寄ってくる。
オレはなんのためらいもなく、それにナイフを突き刺す。
青い何かがあたりに飛び散った。



続く……