価値
※エル君の最近考えていること
※ものすごく鬱な話
※幸せで、幸せであるゆえに悩んでいる
※うじうじしまくってるだけの話
ここにいてもいいよ。
そうやって言ってもらえた。
ここにいてもいいんだ。
ここで笑っていてもいいんだ。
認めてくれる人が存在することに、愛してくれる人がいることに、嬉しくて、嬉しくて、涙が出てくるぐらい嬉しくて……。
感情も少しずつ戻ってくる。
余計なものまで戻ってきたと思う部分はあるけれど、それでも、人間らしくなってきたと言われる。
魔法が使えなくなってくる。
でも、かまわない。
だってその分嬉しいと、愛しいと思えるようになってきたんだから。
その代償と思えば、オレには大きすぎるこの力の一部くらい、いくらでもあげてもいいんだ。
感情に、いっぱいいっぱい注ぎたいんだ。
マリオネット
もうそう呼ばれたくないから。
仮面をかぶったみたいな無表情は、もう嫌だから。
感情のないゆえに周りに操られてばかりで、がんじがらめで、苦しくなるのはもう味わいたくないんだ。
だから、これでいいんだ。
フェリスも、ジュバレも、オレのことを愛してくれて、オレのこと見てくれて、本当に嬉しいから。
だから、こんな力なんていくらでもなくなってよかったんだ。
なのに……
オレはどうして、この状況が辛いんだろうなあ……。
側に裂かれ、散らかされた服。
着てももはや服としての意味をなさない。
新しくつけられた傷たち。
まだ真紅の液体が体から流れ出す。
頬に触れると、想像以上に腫れていて、熱を持ってる。
痛くて痛くてたまらない。
その場から動けない。
ただ涙だけを流しているしかなかった。
オレが手に入れただけの代償の分を、今、払うしかないんだから。
マリオネットは愛を手に入れた。
でも、今度はその愛情を盾に、操られる。
どこまでもどこまでも救われない。
そうやって誰かに嘲笑われる。
そうだよ。
オレは愛されることをずっと知らなくて、愛されたくて、愛したくて、でも、そんなことできる勇気もなくて、ずっと愛されるのを拒み、愛したくないと思い込もうとしていた。
でも……それでも、ジュバレやフェリスに与えられた物は大きかったんだ。
愛されることが、こんなにも、嬉しくて、嬉しくてたまらないものなんだって、知ってしまった。
そして、もっとそれを知りたいから、愛してと求めるんだ。
大好きで、大好きで、大好きで、その大好きな人の愛を、もっと知りたいと。
そうやって、愛というものに縛られていったんだ。
お前は誰にも必要とされない。
誰もお前のことなんか愛してなどいない。
前だったら、きっと、知ってる、と答える。
でも、今はその言葉を聞くたびにずきっとくる。
それを認めることが、大好きな人たちへの裏切りのように思えて。
その言葉を聞くたびに、違う、と言いたくて。
愛してくれる人がいるんだと、大声で叫びたくて……。
でも、どうしてそういえるの? と聞かれるとわかんなくなる。
わかんないんだもの。
愛されてるとわかるのに、どうして愛されているとわかるのか聞かれたら、全くわかんなくなるんだ。
本当に愛されていたの?
利用されていただけじゃないの?
そう言われると、少しずつ疑うようになってくる。
盲目的に愛していたのが、ふっとわかんなくなっちゃうんだ。
オレがいたせいで、何度も死んだ人がいるんだ。
オレがいたせいで、自分の存在を消しかけた人がいるんだ。
オレがいたせいで、無力で、守る術を知らないゆえにオレをかばって傷ついた人がいるんだ。
オレがいたせいで、無駄な心配をかけることになってるんだ。
そんなオレをなぜ愛す人がいる?
そう考えると、また愛が見えなくなるんだ。
怖くて怖くてたまらなくなるんだ。
愛を知ったけれど、愛の受け取り方を知らない。
愛の守り方も知らない。
傷つけない愛し方も知らない。
オレはあんまりにも無知で、あんまりにも迷惑な存在なんだ。
ごめんね。
オレはつぶやく。
傷だらけの手を宙に向けて伸ばす。
涙だけが流れ、鉄臭い液体がのどの奥からわいてくる。
こういう時、愛されるのがすごく怖くなるオレは、
愛される価値なんてあるんでしょうか……?