フリーホラゲーを呟く会

ホラーフリーゲームの感想を不定期に呟く。時々痛い小説があったり。

NORMAL ABNORMAL 1章 3

「とりあえず・・・・・・お前さ・・・・・・」

「お兄さんはゴゼンだよ?」

「・・・・・・ゴゼン、お前、何か別のものになれるか?」

 ニコニコとしたゴゼン。ノーマル、アブノーマル以前に、人間かさえ疑うコイツ。ヒカリの技くらいまくって無傷なもんだから大したもんだ。

 あの青い液を使って服や体に再生していたし、右手を大鎌に変えていた。まさかとは思うが、他にものになれるんじゃないだろうか?

「え? なれるよ?」

「そのまさかができるとはな・・・・・・」

 結構あっさりと答えやがった。

 なぜオレがこんなことを聞くのかというと、コイツの顔だ。昨日、あれだけ周りを騒がせたんだ。顔はおそらく覚えられているし、「バケモノ」とバレている。その「バケモノ」が道で歩いていたらそらまあ・・・・・・面倒くさいことに・・・・・・。

「じゃあ・・・・・・犬になれるか?」

「いいよ、リッ君♪」

「ヒカリ、歯を食いしばれ」

 ゴゼンのこの呼び方をどうにかしてほしい。爆笑するヒカリに拳骨を落としながらオレは思った。

 

 

「うわあ・・・・・・犬だね・・・・・・」

「・・・・・・ああ、見た目的には全く問題がない犬だ」

 大型犬だ。毛は少し長めの真っ白い犬。さわってみても全く問題はない。

「・・・・・・でも、さっきのはあれだよね・・・・・・」

「・・・・・・あの状態からよくこうなれるもんだ」

「えへへ☆お兄さんすごいでしょ」

 あー、すごいすごい、とオレは言う。心がこもっていないだと? うっせえ。

 ゴゼンは足の方から青い色に変化し、溶けるように液体へとなっていった。人間の姿が完全にネバネバした青い粘液になり、そこから犬の形へと変化していった。正直、グロくてシュールな光景だった。

「・・・・・・というかしゃべれんのか、お前?」

「しゃべれるよ?」

「・・・・・・じゃあ、しゃべるな」

「えー? なんでえー?」

「頭使え。犬がしゃべっていたらどう思う?」

「ハイ、すごいと思う」

 天然バカのゴゼンに頭が痛くなるオレにヒカリがふざけて答えた。どこまでも黒い奴だなヒカリ・・・・・・。オレを悩ませてそんなに楽しいか・・・・・・。

「・・・・・・とにかくしゃべんな」

「えー・・・・・・」

「えー、じゃねえよ」

 コイツ・・・・・・疲れる。

「・・・・・・」

「・・・・・・どうかしたか、ラグ?」

「・・・・・・」

 いつも大人しくオレらを見てるラグがゴゼンに近づく。ジーッとゴゼンを見つめ、動こうとしない。少し珍しい。これに気づいたヒカリも、ラグに、どうしたの? と聞いている。

「・・・・・・」

 もふっ

「はふっ・・・・・・」

「「・・・・・・」」

「・・・・・・(さわさわ)・・・・・・(もふもふ)・・・・・・」

 一心不乱にゴゼンをなでていたかと思うと、ゴゼンに顔をうずめる。幸せそうな顔をして、ひたすらなでる。

「ラグ、ゴゼンを離してやってくれ」

「・・・・・・(もふもふもふもふ)・・・・・・」

「お兄さんが気に入った?」

「ラグ」

「・・・・・・もふもふしてて・・・・・・気持ちいいです・・・・・・」

「アハハハ・・・・・・。ラグちゃん、もふもふ好きだね・・・・・・」

 ゴゼンを抱いたまま離れようとしないラグ。

 コイツらは、オレを困らすことしか考えてないんだろうか。

 

 

「試合までには帰る」

「ほいよー」

「わかったー」

「ゴゼン、だからしゃべるな、って言っただろ」

 なんでー? と聞き返す犬、ゴゼン。シュールな光景に頭が痛くなってくる。

 ラグはゴゼンを抱くのをやめはしたが、未だにゴゼンにさわり続けている。まさかもふもふが好きだとはな・・・・・・。あまり好き嫌い言わないものだから手のかからない奴で、でも、逆に好きなものも特に知らなかった。

「で、ゴゼンが言う探しているのは3人組、か」

「オレらみたいだよね」

「猫みたいなガキ、気の強そうな女1人、店長さん1人って・・・・・・」

 1人、見た目関係ない奴混ざっていた気がする。

「にしてもアバウト過ぎねえか?」

「えっ? リクの頭が?」

「殺すぞ、ヒカリ」

 口を開けばけなす言葉しか出てこないコイツはどこかおかしいと思う。

「見た目の説明が。イメージで説明されても困るぞ?」

 もう一度言うが、「店長さん」は見た目の説明すら一切していない。ヒカリが、まあ、そうかもね、と珍しく苦笑する。

 まあ、とりあえず思うが・・・・・・。

「もふもふ・・・・・・」

「リクー、金があんならメシ食わねえ?」

「ねえ、お兄さんいつまでこれでいなきゃいけないの?」

「お前ら、探す気ないだろ」

 オレは久々に自分がこんな安請け合いしたことに後悔した。

 

 

「あいつらか?」

「あいつらだね」

「・・・・・・犬と子供は知らねえが、あの2人で間違いない」

「イケメンだねえ、あの2人。壊すのが少し楽しみ♪」

「ドSめ」

「さて、どうやっておびき出す?」

「そりゃあ・・・・・・あのガキ使った方が手っとり早いよね」

「んじゃあ、それについてはよろしくね☆」

「・・・・・・それ以外にあたしは手を貸す気はねえぞ。こんなこともやりたくねえがな」

「へえ、お前は参加しないんだ」

「参加するか、アホ。あたしはてめえらみたいなアホと手を組んでいるだけ。生臭いのは勘弁だ」

「情報屋は生臭いのは苦手って?」

「なんとでも言え、カスが」

「カスってwwwまあ、いいけどよ」

『ヒカリ、ちゃっかり買って食ってんじゃねえよ!』

『ん、おいしい。もう一個ちょうだい、おばちゃん』

『無視すんな!』

『おいしそうです・・・・・・』

「アイツら片付けんのにオレとコイツだけで充分だからな」

 

 どうしてか、オレは突如、よくわからない胸騒ぎがした。

 

 

「見つからねえ」

「イメージで探す、ってこと自体、無理な話だよね」

 いやあ、結構時間食ったねえ、とヒカリは笑って言う。

 何度聞いてもゴゼンはイメージでしか話さない。こいつはどんだけ探している人物を見ていないんだ・・・・・・。せめて身につけている物ぐらい言ってほしい。

「ったく、コラ、ヒカリ、だから何気なく買い食いしてんじゃねえ!!」

「おいしいんだもん、ここの食べ物。ほら、リクも一口食べてみたら?」

「おいしいですよ、リクさん」

「だからラグを巻き込むなって何度言えばわかる、お前は・・・・・・」

 お兄さんにもちょうだいよ、と何度注意してもしゃべるゴゼンにも頭が痛くなってくる。

 粉を水に溶かし、野菜を入れて鉄板で焼いた料理を頬張るヒカリ。ヒカリから餌付けのようにもらってはふはふ食べるラグ。しっぽを振りながらちょうだいよ、と言うゴゼン。どこの観光客だ、コイツら・・・・・・。

 マラーはかつてとある国の中心だった。今は別の国になって中心ではなくなったものの食べ物が特徴的で有名だ。ヒカリが食っているのも、恐らくうまい。

 オレはため息をついていたが、オレを無視して食ってるヒカリを見ていると、不思議と腹が減ってきた。

「・・・・・・やっぱオレにもくれ。腹減った」

「オッサン素直じゃないwww」

 コイツ、うぜえ。

 

 

「そろそろ時間だな」

「あ、もうそんな時間?」

 早いなあ、とヒカリは言う。正直、ヒカリは昨日の試合で負傷しているから戦闘を避けた方がいいが、恐らく言っても聞かない言うだけ無駄だからそれについて何も言わない。仕方がない。いったん人探しは中止して、試合会場に行くか。ゴゼンは何やらブーブー言っているが、ついてくる。

「・・・・・・ラグ?」

 ついてくるはずのラグがいない。振り向いても見あたらない。さっきまでゴゼンをさわっていたはず何だが・・・・・・。

「・・・・・・あれ? ラグちゃん?」

「え? ラグちゃん、どっか行っちゃった?」

 ヒカリもあたりを見回し、首を傾げている。アイツは勝手にどこかに行くような奴じゃない。それはオレとヒカリがよく知っている。状況がわかっているのかわからないが、ゴゼンが大変だ、と言っている。

「・・・・・・ヒカリ」

「ハイよ。探そうか」

 こういう時は素直で物わかりがよくてよろしい。

 

 

 ヒカリと手分けして探した。休みの日だからかなのかなんなのかわからないが、人が多い。その中、身長の低いラグを探すのは楽ではない。ゴゼン? ゴゼンはなぜかオレについてきている。

「ったく、まさかガチで人を探すこととなるとはな・・・・・・」

「ラグちゃんって、どっか行っちゃうタイプの子?」

 てめえと一緒にすんな、とオレは言いつつ、ラグを探す。ゴゼンの性格から言って、相手がいなくなったわけではなく、ゴゼンがどっかに行って迷っているに違いない。ラグは数ヶ月間過ごしてきたが、そういう性格ではない。

「オッサン、誰か探している系?」

 突然、後ろからオッサン呼ばわりされる。誰だ、ヒカリ以上に失礼な輩は。

 振り向くと、1人の男が立っている。茶色と金色が混ざった変わった髪。メガネをかけ、黒Tシャツ、ジーパン、スニーカー。おいおい、オレ以上にラフな格好だな。奴はニコニコしている。その目は淡い緑色で、どことなく猫に近い。

「もしかしてさ、これぐらいの身長のツインの子?」

「・・・・・・」

 そいつはヘラヘラしながら自分の胸あたりを指す。ちょうどラグの身長だ。

「・・・・・・そうだが?」

「へえ」

 くすくすとおもしろがるように笑う。どこか裏がありそうなその笑顔が、オレをイラつかせた。ヒカリとは違う、嫌な笑いをする奴だ。

 そいつはオレを見たまま言い放つ。

「ここから2km離れた所にある寺に来なよ。彼女を返すには条件があるんだ」

 ずいぶん偉そうな脅迫だ。オレは拳を固め、そいつのうざい笑顔を見つめた。

「何が目的か教えてもらおうか?」

「目的、ねえ・・・・・・」

 ヘラヘラ笑うそいつ。

「まあ、なんていうか・・・・・・暇つぶしだよ」

 うざい。ヒカリだってこんなうざい笑顔はしない。裏があるかないかではない。悪意の固まりがここに存在していた。オレはため息を一つつく。

「金が目的なら金で解決したんだがな。どうやら違うようで」

「そうだよ、オッサン」

「・・・・・・」

 さっきからコイツ、オッサンオッサンとうるせえ。オッサンって言ったって、まだギリギリ20代だぞ、オレは。

「・・・・・・そこに案内してもらおうか。色々話は聞かせてもらう」

 オレがそう言うと、そいつはケケッと笑う。

「ん~・・・・・・それはできない相談かな? 寺だって探せばすぐ見つかる。それに・・・・・・オレが大人しく案内するわけないし、オッサンも大人しく案内されないっしょ?」

 かわいくねえガキだ。オレは舌打ちする。そいつは笑みを崩さないまま、ふらっと歩き出す。

「うん、じゃあ、また後で」

「・・・・・・っ」

 ヘラッとした笑みのままそいつは人混みの中に消えていった。何とも変な奴だ。そして・・・・・・。

「アイツ、殴られてえみたいだな」

「・・・・・・リッ君?」

「ゴゼン、悪いが・・・・・・オレはアイツをブン殴りに行ってくる」

 リッ君怖い、とゴゼンは言う。ラグに手を出したこと、オレをオッサン呼ばわりしたことと比べたら、ゴゼンの言葉など気にならなかった。オレを怒らせるとどうなるか、少し思い知らせた方がよさそうだ。

 

 戻ってきたヒカリ。アイツも誰かに、寺にくるよう言われたらしい。少なくとも2人以上でラグをどこかにやったみたいだな。ヒカリは笑顔のままオレに言う。

「何がどうなってんのか全然わからないけどさ・・・・・・叩き斬っていいわけだよね?」

「死なねえ程度にな」

「ごめん、それは保証できないわ」

 ヒカリはヘラヘラ笑っているが、ガチでキレている。

 ヒカリは小さい時から色々と体験をさせられている。ほとんど嫌な体験で、いい体験はほとんど覚えてないと言う。そのせいか人の悪意には敏感だ。特に、子供を巻き込むような外道な行為にある悪意には。他人の悪意は許せない。・・・・・・逆は全然いいらしいが。

「とりあえず・・・・・・アイツら殺す」

「ヒカ君も怖いよ」

「黙れ、ゴゼン。てめえにかまっている余裕はねえ」

「お兄さん、寂しいなあ。でも、まあ、いざとなったらお兄さんを頼っていいんだからね?」

 ゴゼンの声を適当にオレらは聞き流した。

 

 

 来たみたいよ、と嬉しそうな声がする。寺の前にある広場に、さっきの失礼なメガネともう1人、金髪で青いバンダナを巻いた奴がいた。メガネの方は丸腰で、バンダナの方は背中に大きな剣を持っていた。

 にひひ、と笑うメガネ。

「オッサンたち来たよ、ロック」

「見ればわかるだろ。いちいちオレに報告すんな」

 緊張感など欠けた会話。うざってえ奴ら。ヒカリが口を開く。

「ラグちゃん、どこにやったか教えてもらおうか? じゃないとオレ・・・・・・」

 君らの命、保証できないわ。一切笑みを崩さない。その目には、あきらかに怒りがあったが。相手方はそんなヒカリを見て、一瞬にして黙った。メガネが口を開く。

「条件があるってこと、聞いているだろ?」

「聞いているからさっさと教えてよね」

「慌てるんなよ、姫さん」

「姫さ・・・・・・」

「姫さん」という言葉に眉を寄せるヒカリ。ヒカリはこう言っちゃなんだが、女みたいな顔つきだ。色は白いし、目は大きいし、まつげは長い。化粧させたら女そのものになりかねない。本人もそれを気にしている。

 そんなヒカリを無視してなのか、それとも気づかないのかわからないが、メガネは言う。

「オレらが出す条件っていうのは、てめえらだよ、オッサンに姫さん」

 てめえらの命がほしいってわけ。

 腕を組み、俺は考える。金じゃなけりゃ、大体こういうことだろうとは思ってはいたけどな。

「・・・・・・だってよ、ヒカリ」

「心外だなあ。でも、まあ、心当たりないわけじゃないけど」

「キキッ、襲われ慣れているってか」

 さすが、「お尋ね者」

 メガネはあのうざい笑みを浮かべる。ヒカリは剣に手をかける。すっと笑顔を消した。無表情。目が一切笑っていず、ぞっとする程冷たさを宿らせていた。

「それなら話が早い。君ら、ブチ殺す」

 ヒカリはいつもの剣を抜き、オレは銃を構えた。