フリーホラゲーを呟く会

ホラーフリーゲームの感想を不定期に呟く。時々痛い小説があったり。

ストスト参考資料2

あらすじ

インが赤い髪の誰かに飛び蹴りをくらった

 

 

ってえ、と言いつつ体を起こすイン。痛いで済んで、ケロッとした顔で立ち上がっているあたり、インは只者ではない。

「……なんだ、生きていたか」

そんな不謹慎な言葉を普通に言える人がいる前でインの異常さなんてかすんで見えてきたのだが。

飛び蹴りをくらわせた人物は随分と身長の高い赤い長髪の男だった。緑色の瞳は随分とクールな印象を持たせ、言うなればイケメンの部類だ。スラッとした足、白衣を翻らせてまだ立ち上がりきれていないインを蹴飛ばす。

楓はえええええ!!と叫んだ。あの飛び蹴りを食らわせておきながらまだ蹴るか、この人!!犯人たちには見えないし、生徒にも見えない。つまり、部外者か教師だ。

あはは、やめてくれよ、こんなデンジャラスなことをやらかす人が先生とかさあ……

『青葉 彗流来 化学担当・化学部顧問』

ごめんなさい、今日転入してきたばかりですが、こんな人が教師やっているところで生きていける自信が全くありません。

楓が自分の人生を振り返っている間にインがその蹴りから体制を変え、スタッと着地する。まるで何にも食らっていないかのように、何事もなく立ち上がった。

「……青葉、てめえ、今日こそぶっ殺そうか……?飛び蹴りとか教師のすることじゃねえだろ」

いや、それに関してはあなたも人のこと言えません。一体誰がそんなボールペンの使い方を思いつくと言うんですか、この人は。

「……てめえ……何発砲させてんだよ……おかげでオレの研究室めちゃくちゃなんだよ」

「知るかよ、んなこと~。向こうが勝手に撃ってきたんだからオレが知るかって言うんだよ!!」

「危うく流れ弾が当たるとこだったじゃねえか!!どうすんだよ、おい、痛いんだぞ、あれ!!」

ああ、過去に当たったことがあるんですね。うふふ、どういう状況にいたのかしら、この人、もう、自分でも何やっているんだかわかんないや。楓は現実逃避のためににらみ合う二人から目をそらした。

視線の先には血まみれで倒れている女性がいた。

「梓を盾にしたからどうにかなったとはいえなあ!!」

「梓さあああああああん!!」

どうしよう、もうどうしよう、この人たちやらかすの度合いが違いすぎる!!

何をしているんだ、ひととしていいのか、その身代わりって!?あと放置でいいんですか、血がだくだく流れて動かないんですけど、大丈夫ですか、この人!?

楓はいくつもの疑問を頭に浮かべ、心の中で早口でツッコミをいれまくる。そうでもしないとやっていられない。

楓は女性に駆け寄り、さっき聞いた女性の名前を呼び続ける。一向に動く気配なし、本当、この人、僕がいなかったらどうするつもりだったんだろ、ねえ。ため息をつくと楓は女性の血が出ている場所に手をかざし、何かつぶやいた。

 

 

―場所は変わって……

犯人たちの数人が先ほどの少年たちから身を隠そうと鍵の開いている一室に逃げ込む。途中、何人かとはぐれたが、今はそんなことを気になどしていられない。とにかく、ここを無事に逃げることが先決だ。警察なんかに今更捕まっていられない。

ドアを閉め、カギをかける。これでとりあえずは時間は稼げる。問題はどうやって脱出し、逃亡するかだ。仲間のことは気になるが、仕方がない。そこまでの絆はあまりない。

部屋の中から何やら金属同士がぶつかる音がする。

その音に反応し、誰だ、と言って銃をそちらに向ける。

メガネをかけた女性を思わせるかのような美しい顔立ちをした一人の少年が椅子に座り、その長い脚を組んで、何か音楽を聴きながら本を読んでいる。その向こうには赤に近い色の髪を一つに縛った少年らしき人がこちらに背を向け、ガラクタにしか見えない山に手を伸ばしては何か探して手元に持ってきて、道具を使ってかちゃかちゃと何か作っている。二人ともこちらに気付いている様子はない。

好都合だ。

気づいていないならこっちに利がある。さっきの少年から言って油断は禁物だが、この美少年は見るからに力がなさそうで、音楽を聴きながら本に集中している。今ならいける。

そう判断した一人が、おい、と美少年のこめかみに銃を押し当てる。わざとらしく音を立て、指を引き金にかける。

「……悪いが……」

ちょっと来てもらおうか。

できるだけ声を低くし、怖さが増すように言う。

美少年は反応しない。音楽がサビに入ったのか、どこかで聞いたことあるメロディーを鼻歌しだす。ページをめくり、何事もないかのように振る舞っている。

おい、とその態度にムッとした犯人の一人がさらにこめかみに強く押し当てる。

「……これがなんだかわかっているんだろ、気づいているならその態度……」

「夏じゃなくても火に飛び込むバカっているもんだねえ」

美少年はその容姿に見合うだけの少し高い声をしている。声変わりはすでにきたのだろうが、それでも普通よりはいくらか高い。そんな声で放った言葉の中に、バカにし、見下したニュアンスを含んでいた。

美少年はにっこり笑う。その笑みは天使さえも殺せるのかと思えるほどの美貌で、一瞬くらっと来るほどだ。

美少年は本を閉じる。

突如ビーンという音と何かが突き刺さる鈍い音が響き渡る。

彼に向けていた銃を持つ手に、何か、工具のようなものが突き刺さっている。

一瞬理解できなかった。

次の瞬間には痛みに叫び声を上げた。

「……晃、挑発するな、後がめんどくさい」

「そういう凛だって、随分手が早いこと」

何かをいじり続けていた少年にも銃をむけていたはずだ。だが、彼はそれに臆することなく、手にしていたドライバーを正確に、あの速度で投げた。手に突き刺さり、貫通するほど。

凜と呼ばれた少年はふう、とため息をつく。そして、両手に持っていたトンカチとハンダゴテを構える。その視線は鋭く、とてもただの高校生ができるような目じゃなかった。

 

「……で」

晃と呼ばれた美少年は微笑み、縛り上げた犯人の一人を踏みつける。

「……誰が誰に来てほしいって?」

「……晃、やめろ。お前がやると全員ドMになって帰ってくる」

あと基本的に捕獲したのオレだからな。凛はそういい、晃から入手した楓のメアドに犯人捕獲のメールを送る。

 

「……知らない人から犯人捕獲メールきたよ……」

どうなってんの、ここ。

楓は犯人捕獲を喜んでいいのか、憐れんでいいのか、知らない人に対してどうしたらいいのか、全てにおいてため息をついた。