フリーホラゲーを呟く会

ホラーフリーゲームの感想を不定期に呟く。時々痛い小説があったり。

生キタイ

冷たい手がオレの頬をなでる。ぞっとするぐらい冷たくて、背筋が凍る。
それと同時にねっとりとした感触が唇に伝わる。無遠慮に侵入してくるその舌に抵抗すらもできないまま、嫌悪感だけが全身に巡る。
嘲笑う顔。
怯えるオレをおもしろがる。
何がおもしろいのかわからない。オレはおもしろくない。息ができなくなりそうなくらい怖くて、苦しい。
冷たい手は全身を撫でていく。舌で舐められていく。
気持ち悪くて、嫌だ。
ビクンッとはねる自分の体。いやらしい音が自分からしてくる。


オレじゃない。
こんなのオレじゃない。
抵抗もしないでただ泣いていいようにされるこの少年はオレじゃない。
違う少年だ。
自分に似た少年だ。
他人だ。


『お前だ』


違う


『これはお前だ』


違う


『お前自身だ』


違う


『お前さえもお前を否定すると言うの?』


違う


『呆れたな』


違う


『もう声も聞こえてないの?』


違う


『諦めなよ』


違う


『…お前が苦しんでるだけなんだから』





チガウ





外が見たい。
あんなに嫌いだった太陽の光でさえも見たい。
薄暗くて閉じられたこの中で過ごし始めて、何日経ったかさえわからない。泥のように深く眠るのが夜なのか、昼なのかさえわからない。時間がわからない。
失った分の記憶の何とも言えない空虚感を埋めるかのように、毎日の記憶が乱暴に頭に入ってくる。思いだしたくもないくらい苦しくて、辛くて、たまらない記憶が生々しく。
ボーッとしてるとつい考える。
あの人元気かなあ…あの人に会いたいなあ…
そんなことを。2度と会わないことを誓ったのに、会っちゃダメだってわかっているのに。…それに、あの人はきっと、オレと言う存在がいたことさえ忘れているはずなのに。
会っちゃダメだよ。
迷惑で、気持ち悪い存在がいるだけだ。不快にさせるだけだ。自分が傷ついて、泣くだけだ。
そう言い聞かせても、涙は溢れる。


あの人に会いたい。
温かい手で撫でて。
愛しそうに抱き締めて。
大好きと言って。
オレを思い出して。


孤独で、悲しくて、寂しくて、辛くて、苦しくて、泣いてるオレ。
「君が苦しめば、誰も傷つかない」
誰かがオレを見てそう言った。確かにそうだ。オレがいたせいで、傷ついて、巻き込まれて、命さえ落とした人がいた。オレが我慢して苦しんで、孤独に耐えてれば、誰もオレの迷惑を受けず、苦しまないで済んだ。オレがマリオネットのままでいたなら…。
…でも、オレの命って、感情って、他の不特定多数より価値がないもの?
あったらいけないもの?
ねえ、誰か、否定してよ。オレは、苦しいよ…。


オレはその日、血を大量に吐いた。大好きな汁粉もチョコも食べれそうにないくらい、お腹は痛くて吐き気がした。
何度食べても、何度飲んでも吐き出した。キリキリと胃が痛んだ。
そいつは点滴を打った。こういう時治療するのは、死んだらおもしろくないからだろう。
ひどいことされないなら、苦しまないでいいなら、具合悪くいたいなあ…。
痛いもの。痛いよ。痛い。
ねえ、何人にオレの声聞こえてる?オレの存在覚えてる?


寂しいなあ…


ねえ、オレ、壊れちゃうのかな?
死にたくないよ。
壊れたくない。
あの人に会わせて。
あの人に会いたい。
あの人にオレのこと思い出させて。
壊れたくない。
壊れたくない。
マリオネットって呼ばないで。
死にたくないよ。
オレ
ちゃんと意志あるのに…。
生きたい。
生きたい。
愛されたい。
生きたい。





「…あなたは人を愛してなどいない」
目の前に立った人影。
うわっぺらな笑顔を貼りつけ、オレに囁きかける。
「あなたは最低だ。愛していると言って、利用するのですから」


何を言っているのか理解できない。


「SOS出さないのは、迷惑をかけたくないからじゃない。信頼してないからだ」


この人は何を言っているの?


「あなたは愛を利用してる。自分の傷を埋めるために、健気に守ろうとする自分に酔うために、愛を語るだけだ」


違う。


「あなたは誰も愛してない」


違う。


「あなたは見下してる」


違う。


「…あなたの愛など、ただの偽物だ」






誰ノ為二
オレハ苦シミ
泣イテイルンダロウ
ネエ
誰カ言ッテ
オレハ生キテイテイイッテ
誰カ二愛サレタンダッテ
大事ナ存在ッテ
言ッテ…
大好キト言ウコトサエ
嘘ダト言ワレタクナイ
ドウシテ
愛シテルッテコトモ否定サレルノ


マリオネット二
モウナリタクナイノニ…