フリーホラゲーを呟く会

ホラーフリーゲームの感想を不定期に呟く。時々痛い小説があったり。

憩 1  ~ヒカリ~

オレが誰かと付き合うと言ったら、お前らはどう思う?

 

 それが、リクがオレとラグちゃんに言い放った言葉だった。

 一瞬、何を言っているかわからず、はい? と聞き返してしまった。朝に弱いリクの代わりにラグちゃんが作った朝食を食べ、今日は何するかなー、と考えていた矢先だった。

 リクの顔は至って真剣で、それが仮に話しているわけではないことはオレでもわかった。その誰かと付き合う気ではいるんだ、このオッサン。

「あの……それって……リクさん、好きな人でも……」

「好きなやつというか……まあ、うん、この前告白されたもんで」

 ラグちゃんの問いにどこか言いづらそうに答えるリク。だが気づいてほしい。その言葉、あんまり答えになっていないってことに。

 オレは一度ため息をつく。なんていうか、リクらしくない。もっとずばずば物言って、毒吐くオレをほぼ脅しで諌め、時には拳骨を落とす、割と怒りの方面に正直なリクが、こんなもごもご何か言ってるというのはもどかしい。言いたいことがあるのならはっきりしてほしい。

「で、なんで急に? 告白なんて、オレが知っているだけでも何十回もされているでしょうが、男も含めてだけど」

「待て、そこに男を含めるな、オレのトラウマに塩を塗り込んでくるな」

 告白については否定しない。

 まあ、リクは無自覚のイケメン、長身、細いがバランスのいい筋肉質で引き締まった体をしている。しかも紳士で、相手を思いやることについては文句なしだ。

 見た目的にも中身的にも、ついでに言うと家事能力も体力もいいし、子煩悩で、博識。稼ぎは悪くないし、無駄遣いもしない。オレから見ても、世間的に見ても、リクは完璧すぎる人間だった。完璧すぎて、恐ろしいくらい。まあ、難をつけるとしたら、髪が長いことぐらいかね。別に髪に特にこだわりがあるわけじゃない。面倒くさがっているだけだ。

 でも、リクは誰とも付き合おうとしてこなかった。どんなに言い寄られようと、なんだろうと。理由は簡単だ。まだガキだったオレらがいるからだ。10代前半と後半のガキ一人ずつを、よく10年育て続けたと思う。いや、オレは15年か。考えたらラグちゃん育て始めたのって、オレがリクに拾われた5年後だったな。

 感謝はしている。が、時々、自分の幸せについては考えたりしないのかは考えてはいた。オレらじゃない誰かの為に生きないのかな、って疑問と、不安を抱いた。成長し、もうガキじゃない年になっても、オレらが枷になってないか考えてはいた。

「……相手はどんな女の人?」

「……正直、まだわからない。……だが……結構前に声をかけられて以来、何度か話したことあって、気になってはいた」

「何したりしてたの?」

「お茶に誘われたか、最近だと」

 おい気付け、オッサン。付き合うの定義をなんだと思っている。オッサンじゃねえ言いながらすでに39歳オッサン。鈍い。フェロモン出しまくりなくせに何故いつも鈍いんだ。

「……他には?」

「ん? ……一度、買い物したかね。よくわからないから選ぶの手伝ってくれって」

 気付け、オッサン。世間一般的にそれは付き合っているようにしか見えないわ。

 隣にいたラグちゃんも首を傾げ、何か小さな声で呟いている。聞こえはしないが、まあ、大体思っていることは同じだと思う。

 と思ったら、今度は声に出す。

「あの……リクさん、すごく気になるんですが……」

「なんだ?」

「お相手の方はいくつですか?」

 ああ、とオレはうなずく。それはオレも気になってはいた。一体いくつだと言うのだ、その人は。まあ、オレよりは年上だろうけど。というか、そうであってほしい。

 ふむ、と一息つき、リクはお茶を飲む。そして言った。

「24とか言っていたな」

 なんでよりにもよってオレより年下。なんでリクより15歳年下。むしろ相手が大丈夫なのか心配になってきた。

 

 

 

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「憩」はかつて書いたYES or NO?のように、様々な視点から一つのことを見て行きたいと思います故。

一応ハッピーエンド予定。

これ本編に織り込むかどうかはまだ決めてないです。

ただ、リクさんとリクさん嫁の話が書きたかっただけなんで。