憩 4 ~ミズキ~
リクベルトさんっていうの。
昼休み、いつも職場の休憩室。レイナはそんな爆弾発言をかました。
女のあたしから見てもレイナはすごく可愛い。黒い髪が綺麗だし、小柄だし、心底優しいお人好しさんだから、職場の独身男性の中では憧れの的であり、彼女と近づこうと必死になる。レイナはいい子だ。
だからこそ、
「……えええええええ!?」
全く知らない人の名前口にして赤くなるレイナにその場にいた全員、固まった。
「レイナ、どういうこと!?」
「どういうことって……どういうこと?」
「あんた、そんな赤くなるくらい好きな人ができた、って……いつからなのよ?」
「三か月前くらい?」
地味に昔!こんなに可愛いのに恋の一つすらしたことがない彼女が、男を作ったって!大事件だよ、そりゃ!
レイナは首を傾げ、そんなに驚くこと?とまっすぐ見つめてくる。
ええ、そうですとも。驚くことですとも。あんたはそうでも、あんたと幼馴染のあたしでさえびっくりしたわよ。独身男性陣の顔を見せてあげたい。あのなんとも言えない切ない顔!
あたしはため息を一つつき、まず、一言、おめでとう、と言った。レイナは、驚いて焦ったあたしを不思議そうに見つめていたが、その言葉に笑顔でありがとう、とお礼を言う。本当、可愛い顔してる。
誰も入ってこない店の個室。二人で時々飲みに来た酒場だ。昔はもっとオッサンとか多かったらしいが、ある時を境に店の感じを変えたという。それでいい。今はあたしやレイナみたいな若い女でも入れる、いい店だ。
そこであたしはお酒とつまみを食べつつ、で、と話を切り出す。ちなみにレイナは酒豪だ。
「ぶっちゃけ相手名前と年齢と、人種、職業は?」
「えーっと、リクベルト=アウルさん、39歳」
この時点でぶほっとなった。ちょっと待て、あんたより15歳年上だぞ!?オッサン趣味なのか、この子!?
「……続けて」
「アブノーマル竜族」
「ふーん……すごく珍しいね?」
あたしはアブノーマルって言うの、あんま見たことないしね。
「えっと……職業……職業……」
「……まさかと思うけど、無職?」
レイナは違うの、と言いつつもちょっと言っていいのか迷っている。いいから言えばいい。むしろそこまで来たら何が来ても驚かない自信がある。
「大丈夫、誰にも言わないし」
「……本当に?」
「本当本当」
「びっくりしない?」
「……年齢の差の方がびっくりしたんだけど?」
「それよりちょっとびっくりするかも」
マジかよ。爆弾多すぎないか、その人物?
じゃあ、とレイナはどもりつつも言う。
「……あのね」
「うん」
「リクベルトさん、今は主夫で、稼ぎは賞金稼ぎなんだって」
「無職とどう違うの?」
「うん、それはつっこまないでほしいって」
「おい」
「あとね……元々軍人なんだ」
15年前くらいの、あの国の。
レイナはちょっと言いづらそうにそれを口にした。あの国の、元軍人。あの国って言うのは……大体予想はついた。
正直、これだけの情報じゃ、なんでレイナがその人を選んだか全く理解できない。だって、あれじゃん?若い娘のレイナを誑かして、無職がヒモになるって言う感じにしか聞こえない。うん、どんなに整理しても、ちょっとこの条件の人はあたしなら全力でお断りする。それに……あの国の軍人だった、っていうのは、どうも……。
あたしの思っていることは、多分、レイナにも伝わった。あたし、顔に出やすいってよく言われるし。この情報だけじゃ、あたしがいい顔しないっていうのも、多分、彼女はわかっているんだと思う。
「……ねえ、レイナ」
「何?」
「……あんた、そのこと聞いて、なんで引かないの?」
「引くって……何が?」
お人好しのあんたが、そんなパッと聞いてロクでもない男に引っかかったって言うのが、あたしは見過ごせない。別れろとは言わない。だけど、これだけで結構アウトの部分があまりにも多すぎる。彼女が不幸になりそうで怖い。
レイナは困ったように笑い、そしてまたしゃべりだす。
「ふふ、ミズキ、顔に出てる。……普通なら、多分、ミズキみたいに引いちゃうだろうね。リクベルトさんもそれわかっているよ」
「……は?」
「わかっているから、ずっと誰とも付き合わないし、好きになりもしなかったんだって」
「……理解してその年まで結婚もせず、無職と」
ミズキ言い方悪すぎ、とレイナに怒られる。怒っても可愛いのは、言わないでおこうと思う。迫力が本当になさすぎる。
「でもね、私、なんとなくだけどね、リクベルトさんは大丈夫な気がするんだ。ミズキにとっては危ない人かもしれないけど、私には、優しさそのものみたいな人だから」
長い間、沈黙が続いた。いつも優し気に笑っているレイナの顔に、キリッとした、何かこう……一つの何かを決心する物が見えた。彼女の何かを、そのリクベルトとか言うクズ男は持っているのだろうか?あたしにはそうは見えない。
嬉しそうに語るその顔に、あたしは何も言えなかった。言葉になれないそれを飲み込もうと、あたしは酒を飲み干す。飲み過ぎは禁物だよー、とレイナはまた苦笑した。明日また仕事だけどそんなこと気にしていられるか!
レイナ、遅いなー。あたしがちょっとばか早く着いたのが悪いんだけど、もう時間なんだけどなー。遅刻するような子じゃないってわかっているんだけど。
今日はレイナと服を買いに行こう、という話になっていた。給料カツカツだけど、2カ月に一回の二人の楽しみだ。それくらいの余裕、まだまだ社会人ひよっこのあたしたちにもある。……ま、レイナはあのリクベルトとか言う奴のために服でも買うんだろうなー。あー、ちょっと腹立つ。彼女を不幸にしたらマジで張り倒しに行くぞ。
時間を確かめながら、ふと、近くのベンチに誰かが座っているのが気になった。男の人っぽいけど、髪がやたらと長くて縛ってる。黒いシャツ、ジーンズにブーツ。服の上からでもわかる筋肉質な体だ。背がでかそうだし、脚長い。サングラスかけて、何か怖い感じなのだが、となりにあるのが、大きなクマさん。
年が30代くらいだからなー、娘に買っていくつもりなのだろうか?いやいや、それにしても、あのちょっと極道さんみたいな感じの怖いあの人がクマのぬいぐるみと一緒とか。ちょっとクスッと笑ってしまう。いや、見た目の怖さからそんな和ましく思っている場合じゃないんだろうけど。
その人はこちらの様子に気づいた。ちょ、笑ったのバレタ!?ねえ、バレタ!?
嘘、ごめんなさい、笑うつもりはありませんでした、だからこっちに来ないで下さい、ああ、レイナ、あたしが居なくなったら時々思い出してn
「遅いぞ、ヒカリ」
え、となり、次の悪い悪いと謝る声にハッとする。そうじゃん、いかにもな格好を極道さんするわけないじゃん、バカなのあたし?バカだったよ。
勝手にはじめ、勝手に解決しようとしている心の修羅場。あたしの後ろから来た男性が、その怖い感じのその人に仲良さげに話しかけている。一見、年の差は5,6歳くらいありそうな感じがするが、2人の人は普通にタメ口だ。そして、その間にはでかいクマのぬいぐるみ。なんていうか、何か、こう、カオスだ。
「今日はまだ用事があるって言っただろ、遅れてくるなよ」
「困らせたくて」
「お前、オレを怒らせるために生きてるのか?」
「そうじゃないと思った?」
「イラッとさせる回答だな……!」
ああ、うん、イラッとするね。完全に年下のヒカリとか言う男性がおちょくってるね。赤の他人でさえそれはイラつくね。
年上そうな男性はため息をわざとらしく深く吐く。もう色々諦めたような、そんな感じだ。そして、大きなクマを抱えると、歩き出す。
「今日は彼女に買う物選ぶの手伝ってくれと言ったはずだろ」
「それくらい自分で選んでよねー」
「……選んだら選んだで文句と大爆笑するくせにな」
「どうしようもないセンスを振り絞られたプレゼントは悲惨だと、気付けオッサン」
「っるせえ、置いてくぞ」
あー……うふふ、何かすごい楽しそう、というか、仲がいいんだなー。基本、毒とツッコミしか入ってない気がするけど、まあいいや。
ヒカリという男性は年上が行くのを見て、あ、待って、と口にする。
「リク、ちょっと落ち着いてよ」
30代くらい……彼女もち……リク……ここらへんにもよく来る人だ、って言ってたな、レイナの言う人は。
「……まさかねえ」
レイナから話聞いて、気が立ってるんだ。まあ、気のせい気のせい。
万が一、あの人がレイナの言う恋人だったらどうしよう?その時はなんというか……レイナの度胸を称賛しよう。
そんなもしもの話で、あたしは苦笑した。
To Be Continued……
ホラーフリーゲーム 感想5
『ハートレスマンション』
・あらすじ
大学生の主人公はある日の夜、夢でハートレスマンションという場所に訪れる。そこで管理人を名乗るフードをかぶった人に出会う。管理人から、今日から7日間ハートレスマンションと呼ばれるそこで「案内人」をやってほしいと頼まれる。
なんでも、そこには想いを残して死んだ者がいて、想いを遂げるために現世にいる誰かをそこに連れてくるという。呼ばれた方「迷い人」を、「壊したがり」と呼ばれる存在から守りながら、呼んだ死者に会わせるのが案内人の役割という。
いやいやながらも引き受けた主人公は、迷い人と出会い、そして、迷い人とマンションにとどまった魂との思い出を見ていく……。
・感想
個人的に超良作。ベタな話なのに、ベタな話だからなのか、とても泣けます。切なくて、感動もして、よかったね、と思えます。迷い人とは最初、なんだコイツ、と思うような人も何人かいましたが、その人の話を聞いていくとだんだんその人も好きになっていきます。
ホラー、というより、ホラーっぽいいい話かもしれません。
父と娘、妹と兄、祖父と孫、妻と夫……。それぞれの親密な関係で紡がれていく物語が、個人的に大好きでした。
その反面、壊したがりが若干エグイ。なんじゃこれ!?と思うそんな人間?に追いかけられるって……。ゾンビ人間梅田さんが一番マシでした。マリア様が怖すぎる。何か言ってるのがトラウマなんですけど。
軽く7,8時間分あるフリーゲームにしては長いゲームでしたが、謎解きが全く飽きませんでした。また、ストーリーにはあまり関係がない人らのおまけの話のようなものも楽しめました。
いい出来です。
しかし、真エンドのハードさがヤバかったです……。おまけっぽいからいいのかな……。
『eversion』
・あらすじ
ない。
・感想
アクションゲーム。マリオのように敵を踏んだり、空の色が若干変わるところであるボタンを押して状態を変えたりと、アクションゲームとしてはおもしろいです。敵もピタッと止まったり、雲に乗れたり、植物が邪魔で通れなかった部分も通れるようになったり、普通にねおもしろいんです。
ただ、最初、すごく明るい雰囲気で始まって、ホラー要素が皆無なんですよ。ところがどっこい、進めていくうちにどんどん雰囲気が……。なんじゃこれ……。
明るい雰囲気から一気におどろおどろしい雰囲気になった時はヒッとなりましたね。ブロックが笑顔だったのが、急に真っ黒な目のぐにゃぐにゃした感じなったり、クリボーみたいな敵キャラが一つ目のなんかうねうねしてる紫の物体になったりしてます。
途中から血が出たり、スコアが物凄い勢いで変わったり、鼓動が聴こえたり、英語で何かのメッセージが出たりと怖い要素は満載。
タイトル画面で騙された感が素晴らしいです。アクションとしてはおもしろくても、立派なホラーだと思います。
『いりす症候群』
・あらすじ
キャンプに来ていた大学生三人。大学生の女の子は夜に……。
・感想
一応あらすじは書きましたが、実際は即死系物理パズルゲーム。何か豆腐のようなものなどを使い、図形を消していくというゲームです。
一見、ストーリーはなさそうだし、うさぎの衣装を着た女の子が可愛いなー、ぐらいです。しかし、アルバムを見てみると写真が増えていて、そこには三人の会話があります。それに付け加え、ゲームをやっていくうちにテキストファイルも出現してきます。回数を重ねたり、スコアを伸ばすことによって更にストーリーを読むことができる、結構斬新なゲームです。
怖さ的に言ったら、狂気じみた感じでしょうか?うさぎの女の子も、大学生3人のうちの一人も、ひどく狂気じみていて、じわりと怖いです。
個人的に音楽がいいと思いましたね。曲名がぼっちの人の心を斧で傷つけてきますけど。
『人体パズル』
・あらすじ
人が失踪する事件を知らなかった主人公※※※※。ある日、彼女は血まみれのベッドの上にいて、消えた友人を探し始めますが、そこの空間には大量の人間の死体が……。
・感想
グロ耐性がある人にはいいかも、ですね。最初、人の脳に根付いている植物や、顔が抉られた男性っぽい人影に気持ち悪くなりましたが、慣れてくるとそうでもない。感覚としてはなんとなく、抽象画の世界に迷い込んだ感じの不思議さでした。ゆめにっきに似ているかもです。
ゲームオーバーはありませんが、行動によってエンドが変わってきます。真実が分かった時、※※※※が哀れで仕方ありませんでした。どうしてこんなことに……。
出来はまあまあ、ですが、個人的には好きな部類です。
それにしても、名前が酷いw
『つぐのひ』
・あらすじ
男子中学生、女子中学生、小学生女児。彼らの通学路には何か得体の知れない物がいて、日常を侵食してくる。
・感想
侵食系ガッツリ怖いホラーゲーム。絵柄は妙にリアルで、得体の知れない何かの姿や声がトラウマ。ダメだ、これは、ガチで怖いwww
現在、三話まで出てますが、ガッツリ怖いのは二話、じわじわと得体の知れない気味悪さ胸くその悪さだと三話ですかね。電柱ガ増エテイクノハ、ゾワットシタヨ。
歩かせる、周りを見渡す、上を向く、振り向く、など、操作はそこまで多くありません。そして、矢印通りに動かすとノーマルエンド、あるタイミングである行動をすると、裏エンドになります。
ノーマルエンドの理不尽なバッドはなかなか日本らしいかも。裏エンドは色々酷いのでノーマルエンド後、確かめてほしいですwノーマルがノーマルだけあって、裏が本当に酷いw
『Alice in Halloween town』
・あらすじ
ハピネスタウンではハロウィンの日に雪が降る。
そんなハロウィンで盛り上がる街の中、アリスは人気がない場所でかぼちゃ頭の男に出会う。かぼちゃ頭に誘われ、男の魔法で知らない場所に飛ばされたアリス。そこはお化けとお菓子がいっぱいの、「ハロウィンタウン」だった。
・感想
自分のことしか考えてない、そんな自己中心的なキャラクター達。それでもいい人もいるし、うざい人もいるし、まともかと思ったら全然違ったり。そんな豊富なキャラクター達の魅力がたまりませんでした。
それに加えてデザインがとても素敵。個人的にちとせちゃんやオリバー&チェルシー姉弟、ニックとビビアナが大好きです。マゲさんのあの食えない毒舌女も好きでした。
一周目で4エンド、二周目で4エンド、三周目で2エンド、バッドエンドが2つの、計12エンド。いい話で終わったり、救われないまま終わったり、結局現世で帰れなかったもののハロウィンタウンで楽しんだり、ぞっとさせて終わったり。バリエーションも豊富。
ただ、ちょっとな~、と思うのは重要なところでのバグが非常に多い。どうでもいいところでのバグは別に楽しいですが、ちょっとな~……数段階の作業を飛ばしてとあるイベントにいけるのはな……。
何がびっくりって自分の部屋入ったら骸骨があったり、部屋でたら二階のはずが三階にいたり、骸骨調べたら何か最終的なイベント起きちゃったり、役員さん&ニック&ビビアナエンドで終わるはずが、オリバー&チェルシーエンドになってたり。
謎解きで鍵番号当てるやつも、何故か正しいのに開かなかったり(公式サイトにて、謎解きの鍵部分はミスで、●●●●で開くとあった)など、ちょっとそこはイライラ。
それ以外はデザイン、音楽、ストーリー、いい出来だと思います。とりあえずちとせちゃんに救いを下さい……orz
憩 3 ~ラグ~
お母さんが誰かと付き合います。
……冗談です、お母さんではなく、お父さんです。
これだけを聞いてしまえば、お父さんがひどい人のように思うかもしれません。でも聞いてください。
お父さんことリクさんは、6歳より前の記憶がない私を拾って育ててくれたんです。既に拾って五年以上経っていたヒカリさんと一緒に、リクさん20代後半の時から。それからずっと私たちの為にお金も稼いでくれましたし、料理もしてくれましたし、勉強も教えてくれました。全くの他人だった私達を、ずっと育ててくれました。
そんなリクさんなのですが、最近、彼女さんができたのです。正直驚きました。だってリクさん、優しくて面倒見がいいのですが、基本的に愛想はないですし、見た目はイケメンですが怖いですし、そもそも恋愛なんてしなさそうな方ですから。
ああ、ちょっと複雑ですけど、嬉しいのが本音です。くすぐったいようなそんな感覚はしますけど、でも、リクさんが幸せそうなので、私はとても嬉しいです。……少し寂しくも思いますが。
数日前、今更おしゃれなんて、と言っていたリクさん。ヒカリさんと一緒になって説得しました。だって、おじさんの域に入った人でも、それなりにおしゃれできるのです。むしろ、おしゃれに年齢制限はありません。彼女さんにだけおしゃれ頑張らせる気ですか。
ヒカリさんの2時間に渡る説得の末に、リクさんとうとう根負けしました。おしゃれに関しては私たちに任せるそうです。ヒカリさんと一緒にハイタッチ。リクさん、苦笑い。リクさんが幸せになりそうなら、一生懸命頑張ります!
とりあえず、お店行きましょう、と言うと、リクさんは渋い顔しました。服に時間かけるの面倒くさがる人なんですよね。ちょっとそこは残念です。まあ、センスは確かに少々疑ってしまう出来事も少なくはなかったです。いくら私が動物好きでも、架空動物の不細工なぬいぐるみ貰っても嬉しくなかったですよ、リクさん……。
そして、今、私とヒカリさんはリクさんの初デート帰り待ちです。
ドキドキして、わくわくでもあります。そわそわしちゃって、ヒカリさんに苦笑いされてしまいました。だって、あのリクさんに彼女さんができて、しかも、デートに行ったんですよ? 色々思ったらそわそわしちゃうんです。
リクさんとの付き合いは長いヒカリさん。リクさんに毒吐いたりしますが、育て親のリクさん大好きですし、リクさんのことよくわかっています。私よりもわかっているせいでしょうか。すごく落ち着いていて、いつもとさほど変わりません。
ああ、もう、早くリクさんに会いたいです。どうだったかリクさんに聞きたいです。楽しみなのです。あと、久しぶりに作ったリクさん直伝のお菓子、試食してほしいのです。やることなくて作ってしまいました。
「……ラグちゃん」
「はい?」
「一回深呼吸して、落ち着こう、ね?」
ヒカリさんの言葉の意味がわからず、首かしげてしまいました。ヒカリさんが指をさす方向を見てみました。お菓子の山です。そして、私の手にはお菓子の生地です。多分、リクさんがいつも作る量の倍くらいを今作っています。
「……作りすぎだよ」
「……はい……」
ヒカリさん、すみません。一回落ち着いてきます。
夜になって、9時くらいにリクさん帰宅です。ちょっと疲れたような様子のリクさん。大丈夫だったのでしょうか?
「あの、リクさ……」
「どうだったリクー? リクの人の見る目節穴になってなかったー?」
あの、ヒカリさん、その聞き方物凄く失礼です……ヒカリさんらしいですけど。私が聞くタイミングを逃してしまい、ちょっとオロオロしちゃいました。
リクさん、サングラスを外して、テーブルに置きました。どうでもいいことですが、夜にサングラスする人なんてめったにいませんよ、リクさん。リクさんじゃなければ夜見えてませんよ。
リクさんは深く息をつき、ネクタイを緩め、ボタンを開けました。真冬でもノースリーブで平気なリクさんには、少しきつかったようです。今度はもう少し風通しのいい服を選ぼうと思いました。ああ、こんな説明していたら話が進みませんね。
「……まだよくわかんないな」
「まだあ? 初めてとは言っても、その前の付き合いがあるでしょうが」
「その前は、あれだ、その……知り合いっていう程度だったもんで。彼氏彼女の関係になると、その、な……」
「あー、うっぜ、うだうだしてるリクうっぜ。奥歯に石でも挟まった言い方してないでさっさと報告しろよ」
奥歯に石挟まったら、手術するしかないですね。自力で取るの難しそうです。
私も席に着き、お菓子を差し出しました。もちろん、お茶も出しました。甘党ではないリクさんですが、すんなりお菓子食べてくれました。美味しいそうです。そして、やっぱり作りすぎと怒られてしまいました。
リクさんはお菓子口にしつつもぽつぽつと語り始めてくれました。
リクさんの彼女さんは、私より大きいそうです。それはそうです。私並の身長でしたらリクさんには小さすぎます。小柄な方ではあるそうです。
黒い髪がすごい綺麗だそうです。
良く笑いますし、誰にでも人当たりがいいそうです。してもらったことなら、例え仕事でしてもらったことも笑顔でお礼を言うそうなんです。私にはいい人に思えました。お礼すら言えない人がいると言うのに、言えると言うのは好印象です。
リクさんの口からは悪いところのひとつも出て来ません。彼女さんをとても褒め、むしろ褒め倒しすぎています。
いい人じゃないですか。そういうと、リクさん言うんです。
怖いんだ、って
憩 2 ~ガド~
さて、と僕は一息つく。姉貴の住むアパートに来るのは何回かあったけれど、こんな風に突然訪ねるのは初めてだ。姉貴は優しいからきっと笑ってしょうがない、とか言うと思う。そんな姉貴に甘えてしまう自分に呆れてしまう。
姉貴に甘え、家出してきた僕は18歳。受験のことやら将来のことで両親とケンカになり、ついカッとなって家を飛び出してきた。泊まるお金もないし、今夜は冷えそう、でも、家を飛び出してきたのに今更家に戻るのもしゃくだった。結果、姉貴のアパートの前にいるわけだ。
むしゃくしゃしていて、姉貴に当たりそうで怖い。それ言うくらいなら最初から来るなけど、勘弁してほしい。精神的に結構削られているんだ。
ドアを叩いてみるが、姉貴の部屋からは物音が一つもしない。さっき見た時明かりもついていなかったし、どこかに出かけているのだろうか? まあ、夜中というわけでもないし、きっと買い物かどっかなんだ。すぐに戻って来るさ。
僕は姉貴の部屋の前に座り込んだ。
姉貴は、僕の6つ上の異母姉だ。顔つきは父さんに似て優しげ。綺麗な黒髪も父さんから引き継いだらしい。小柄で、可愛らしいのはお母さんに似たらしい。
姉貴は昔からお姉さん、という感じの女だった。いつでもどこでも、一人で寂しそうな子がいたら声をかけるし、ケンカしたらうまく宥める。こうした方がうまくいくんじゃない? とかさりげなくアドバイスしてくれるし、みんなの意見も纏めてくれる。つまりはまあ、姉貴は人が好いんだ。
僕が泣いたら、姉貴はよくぎゅっと抱きしめてくれた。小さい時からいつもそう。いつも笑顔で大丈夫だよ、とか、どうしたの? とか、元気出して、とか言うんだ。嫌なことがあったら、聞いてくれたし、僕が姉貴にきつめに当たっても、僕を責めるようなマネはしなかった。姉貴になでなでや、抱きしめができた小学校時代の自分に、代われと言いたい。姉貴よりでかくなった今、そんなことできなくなったんだし。
あ~、こうやって考えてみると、僕はシスコンっぽいな。姉貴べた褒め、しかも小さい時のぎゅっ、やなでなでを姉貴にされたいと思っている。気持ち悪いとか言われそう。でも、姉貴好きなんだもの。それだけは仕方ない。
それにしても姉貴、遅いな。
僕は部屋を離れ、道に出る。近くにスーパーがあったし、そこにいるかもしれない。
あー、こういう時に何か連絡取れる物があればいいのに。ちょっともどかしく思いながらも僕は道なりに歩いていく。あたりは既に暗く、月も出ていないから結構暗い。姉貴、こんな中いつも帰宅しているのか。何かあったらどうするんだよ。
僕はぶつぶつ言いつつも歩いていき、近所の公園に差し掛かった。
黒い黒い髪が、街灯に照らされていた。姉貴ぐらいの身長の女性が、立っているのが視界の隅に映る。姉貴っぽい、と思い、振り返った。暗くてよく見えないが、姉貴らしき人物がいる。なんだ、こんなところにいたのか。こんな時間ここで何していたんだろう?
ともあれ、僕は姉貴らしきその人に声をかけようとする。
あの時、暗かったのもあった。そして、姉貴が、この時間に誰かといるとは思えなかった。そのせいか、姉貴の正面に立っているだろう人物に気付くことが遅くなった。
その誰かに気付いた僕が見たのは、姉貴とその正面にいる背の高い男性が、ほんの一秒程度、口づけする場面だった。
え、マジで? そう思う反面、僕は思った。
あの男、ぶっ殺す。
To Be Continued……
憩 1 ~ヒカリ~
オレが誰かと付き合うと言ったら、お前らはどう思う?
それが、リクがオレとラグちゃんに言い放った言葉だった。
一瞬、何を言っているかわからず、はい? と聞き返してしまった。朝に弱いリクの代わりにラグちゃんが作った朝食を食べ、今日は何するかなー、と考えていた矢先だった。
リクの顔は至って真剣で、それが仮に話しているわけではないことはオレでもわかった。その誰かと付き合う気ではいるんだ、このオッサン。
「あの……それって……リクさん、好きな人でも……」
「好きなやつというか……まあ、うん、この前告白されたもんで」
ラグちゃんの問いにどこか言いづらそうに答えるリク。だが気づいてほしい。その言葉、あんまり答えになっていないってことに。
オレは一度ため息をつく。なんていうか、リクらしくない。もっとずばずば物言って、毒吐くオレをほぼ脅しで諌め、時には拳骨を落とす、割と怒りの方面に正直なリクが、こんなもごもご何か言ってるというのはもどかしい。言いたいことがあるのならはっきりしてほしい。
「で、なんで急に? 告白なんて、オレが知っているだけでも何十回もされているでしょうが、男も含めてだけど」
「待て、そこに男を含めるな、オレのトラウマに塩を塗り込んでくるな」
告白については否定しない。
まあ、リクは無自覚のイケメン、長身、細いがバランスのいい筋肉質で引き締まった体をしている。しかも紳士で、相手を思いやることについては文句なしだ。
見た目的にも中身的にも、ついでに言うと家事能力も体力もいいし、子煩悩で、博識。稼ぎは悪くないし、無駄遣いもしない。オレから見ても、世間的に見ても、リクは完璧すぎる人間だった。完璧すぎて、恐ろしいくらい。まあ、難をつけるとしたら、髪が長いことぐらいかね。別に髪に特にこだわりがあるわけじゃない。面倒くさがっているだけだ。
でも、リクは誰とも付き合おうとしてこなかった。どんなに言い寄られようと、なんだろうと。理由は簡単だ。まだガキだったオレらがいるからだ。10代前半と後半のガキ一人ずつを、よく10年育て続けたと思う。いや、オレは15年か。考えたらラグちゃん育て始めたのって、オレがリクに拾われた5年後だったな。
感謝はしている。が、時々、自分の幸せについては考えたりしないのかは考えてはいた。オレらじゃない誰かの為に生きないのかな、って疑問と、不安を抱いた。成長し、もうガキじゃない年になっても、オレらが枷になってないか考えてはいた。
「……相手はどんな女の人?」
「……正直、まだわからない。……だが……結構前に声をかけられて以来、何度か話したことあって、気になってはいた」
「何したりしてたの?」
「お茶に誘われたか、最近だと」
おい気付け、オッサン。付き合うの定義をなんだと思っている。オッサンじゃねえ言いながらすでに39歳オッサン。鈍い。フェロモン出しまくりなくせに何故いつも鈍いんだ。
「……他には?」
「ん? ……一度、買い物したかね。よくわからないから選ぶの手伝ってくれって」
気付け、オッサン。世間一般的にそれは付き合っているようにしか見えないわ。
隣にいたラグちゃんも首を傾げ、何か小さな声で呟いている。聞こえはしないが、まあ、大体思っていることは同じだと思う。
と思ったら、今度は声に出す。
「あの……リクさん、すごく気になるんですが……」
「なんだ?」
「お相手の方はいくつですか?」
ああ、とオレはうなずく。それはオレも気になってはいた。一体いくつだと言うのだ、その人は。まあ、オレよりは年上だろうけど。というか、そうであってほしい。
ふむ、と一息つき、リクはお茶を飲む。そして言った。
「24とか言っていたな」
なんでよりにもよってオレより年下。なんでリクより15歳年下。むしろ相手が大丈夫なのか心配になってきた。
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「憩」はかつて書いたYES or NO?のように、様々な視点から一つのことを見て行きたいと思います故。
一応ハッピーエンド予定。
これ本編に織り込むかどうかはまだ決めてないです。
ただ、リクさんとリクさん嫁の話が書きたかっただけなんで。
WATCHMAN GAME 3
「あったあった」
彗は道の端に落ちていた自分のカバンを拾い、パンパンと埃を払った。まだ買って2,3カ月のカバンに、多少の汚れはあるが、まあ、いい。いずれ汚れただろうし。
カバンの中を確認すると中には、人がいる街にいたと彗が認識した最後の日、その日の次の日の教科の教科書が入っていた。テスト用紙も数枚入っていて、彗は確認する。
「……うっわ、英語48点、数学53点、化学65点……」
やっぱちゃんと勉強しとけばよかったなあ、と彗は苦く笑う。中途半端で、決して褒められた点数ではないと彗は思っている。姉さんに怒られるなあ、と彗は呟いた。もっとも、その彗の姉という人物が、この街にいるとは思えないが。
彗はカバンを持ち、山の方を見た。
結局、誰一人見つけることはできなかった。駅の構内を何周したか彗は覚えていない。何周も何周も周り、人がいる気配すらなくて、がっかりしながら次の場所に探しに行った。
近くの百貨店、スーパー、コンビニ、ゲームセンター、オフィスビル……。結果的に、どこにも人はいなかった。物はある、だが、誰かがいた跡がないのだ。誰かが働いているようには見えないぐらい、そこは綺麗に片付いていて、その事実は十分彗をがっかりさせた。
日も随分落ち、あたりは大分暗くなってきたので、今日の所は諦めようと思い、彗は家に向かおうと思ったのだ。そのためには家の鍵が必要で、自分が目を覚ました場所に戻ってきたのだ。
彗は点きはじめた街灯を見上げる。一番星が見えてきている。時刻はもう6時半を回っていた。彗の住む家は街灯が多いからいいが、色々物が見えづらい時間帯だ。急いで家に戻ろう。彗はカバンを持って自分がいる家へと走り出した。
静かな家はいつ以来だろうか。いつも帰ってくると弟や妹が、彗を満面の笑顔で彗を向かいいれる。5人の子供を養うために共に働きにでている両親が帰ってくるまで、姉と一緒に家事をし、弟妹の面倒を見たものだ。
彗は靴を脱ぎ、家に上がる。リビングとなっている部屋を覗くが、そこは綺麗に片付いていて、子供の姿は何もない。キッチンの方を見るが、いつもなら忙しそうに夕飯の支度をしている姉の姿もない。シンっとしたリビングには、彗の呼吸音さえ微かに響いて聞こえた。この家、こんなに静かだったのか。彗は思った。
深く息をつき、彗は薄暗いリビングの明かりをつけた。正直疲れた。お腹も減ったし、何か食べて、今は休みたい。無造作にポケットに鍵を入れ、ブレザーとカバンをソファに放った。そして、冷蔵庫を開けた。
自分の部屋に入ると、やっと身に覚えがある静けさが来る。自分が寝る前はいつも寝静まっていて、誰もいないかのようだった。彗はほっとし、お腹を満たしたその体をベッドに沈めた。ひどく眠く、肩が重い。ああ、疲れているんだな。彗は目を閉じる。
誰もいないことが怖い。
誰かいた形跡もないのが怖い。
何も物音がしないのが嫌だ。
でも、ここで目を閉じ、眠りに落ちてしまえば、なんだかこのことが夢のように思う気がする。これはきっとリアルな夢で、また目を覚ましたら、うるさい弟たちの声で目が覚めるんだ。
そうやって自分に暗示をかけると、意識はゆっくりと深い闇へと沈んでいく。心のどこかで、何かに対して警鐘を鳴らしていると知っていながら。
目が覚めた時、あの期待していたうるさい弟の声はしなかった。明るくもなく、窓の外を見ると、まだ深夜の様だ。空が真っ暗だ。携帯の時計を見ると、時刻は午前3時を回る頃だった。
彗は言い知れぬ不安に駆られ、目が覚めていた。その不安の正体はわからないが、深く眠っているにも関わらず、彗の意識を一気に引き戻すほど、その不安は大きかった。苦しくなる胸を彗は抑える。呼吸が止まりそうで、鼓動がさっきからうるさい。彗は何か気づく。そして、息を止める。
間違いない、誰かが彗の家にいる。だがそれが、彗が探していた人間ではないことを、彗の不安が優に物語っている。その誰かが、彗には会ってはいけない何かに思えて仕方がなかった。
ギッ……ギッ……
少し古いこの家は、微かに床を鳴らす。この音からして、恐らく階段の前。上って来る気か。
彗は物音を立てぬようそっとベッドを降りる。ベッドの下は収納スペースになっていて、いくらか物が置いてある。出しやすいようにその物を手前においてあるため、ベッドの奥のスペースは空いていることを彗は知っている。できるだけ音を立てぬよう。物をどかし、ベッドの奥のスペースに身を滑り込ませる。
近い場所から音が聞こえた。彗の心拍数がぐんっと跳ねあがる。震え、力が入らない手を押さえ、何とか落ち着こうとする。大丈夫だ、まずは両親の寝室に向かったんだ。そう言い聞かせ、ベッドの下から物を引っ張る。物音を立てぬようそっとそれを置き直し、荷物の陰に身をひそめ、口から悲鳴が漏れぬよう手を当てた。
コツ……コツ……
姉の部屋にいる。壁1枚違うだけで、誰かが歩き回る音が鮮明に聞こえてくる。こんなホラー、見たことあるな。彗は不意にそう思った。
姉の部屋を何かががさこそとしている。何か、探しているようだった。何か物音がするたびに彗の体はビクッビクッと反応し、小刻みに震える。何か、得体の知れない何かがいるのだ。
彗のドアがゆっくりと開く。彗から滝のように冷や汗が流れる。あの隣からも聞こえてきたあの音が、今、彗の部屋に響いているのだ。彗が音を出さぬよう、ゆっくり息を吸う。その音は微かに彗の耳に届く。誰かは、何もせず、ただそこにいる。
そしてゆっくりと、彗のクローゼットに手を伸ばした。
その誰かは、所々でくぐもった笑い声のようなものを発していた。何かを楽しそうに、さも楽しそうに。彗は、その誰かの顔を少しだけみたくなり、荷物と荷物の間に顔をのぞかせ、様子を見た。
彗の気が遠くなるほど長くて短い時間、外から明るい日差しが差し込んでいた。気を失ったようにいつのまにか眠っていた彗ははっとする。体を起こし、昨日の晩のことを思い出す。そして、彗はぶるっと体を震わせた。
彗が見たのは、少なくとも人間の形をしていたが、それは形のよく似た、何かだった。何かと言いようがない、人間の形をしているのに、全く別の物に思えたのだ。そして、その誰かは呟いたのだ。
「生ある者」がほしい、と……。
To Be Continued……
WATCHMAN GAME キャラプロフィール
・高山彗
高校1年生の男子。
5人きょうだいの長男で、共働きの両親の代わりに一つ違いの姉と一緒に家事をし、弟妹の面倒を見てきた。
何よりも妹弟優先で、自分の時間ができるのは夜中。時間とお金がないので、髪は自力で切っているが、めんどくさがってある程度伸びるまでは放っておく。
あまり自己主張は激しくない子で、割と周りに流されやすいタイプ。正義感が強いわけでもなく、感情的にはなりにくく、普段の生活で養われた冷静さで判断を下す。
面倒見はとてもよく、年下に優しく接する。
口数が少ないが陰で頑張るお兄さん。
動物大好き。
・海藤蓮
高校1年生の体格のいい男子。
彗の元幼馴染。中学2年生の時に親の事情で遠くに引っ越した。口数少ない彗とは正反対のよく喋る男子で、自分に素直で正義感が強い。
彗の家庭事情はよくわかっていて、ちょくちょく弟や妹の世話を手伝ったり、大変な彗のフォローしたりと、彗に対して親切。
カッとなりやすく、喧嘩っ早いのでちょくちょく他人と衝突する。そのたびに彗が間に入って蓮をなだめる。
力持ちで、悪戯考えることに長けている。
・桜音遥佳
大学1年生のお姉さん。なるようになれ、しょうがない、が口癖で、現実主義。冷たい物言いは破れたオブラートにさえ包まないので、蓮と衝突しまくる。
剣道少女で、棒状の物なら何でも護身用にできる。冷酷になれるそんな人に見られがちだが、彼女自身は友達想いの人。
過去に何かあったのか、蓮のような考えなしの熱い奴に憎悪すら向ける。
取捨選択能力と、洞察力に長け、イケメンなお姉さん。
・岩田花音
彗が途中で見つけた小学生女子。
小柄で、言動は明るく元気いっぱい。猪突猛進で、彗すら困らせる元気っぷり。
誰かに嫌われることを極度に怖がり、お化け大の苦手。夜も遥佳に寝かしつけてもらわないと寝れないぐらいである。
寂しがり屋で、誰彼かまわず甘えてくる。
足がとても速く、運動能力は彗を驚かす程高い。
・林静
静と書いて「せい」と読む。しずかと呼ばれると機嫌が悪くなる無愛想な中性的な中学三年生のお嬢様。
丁寧な物言いだが、正直毒が多すぎて相手を怒らせることが多い。本人にその自覚はないらしい。
家族の複雑な関係からか、誰かと接することを好まず、一人で本などを読んでいたいタイプ。
容姿は一般的に美人の部類で、母の形見という赤いピアスを左耳に着けている。
手先がとても器用で、頭がいいが、体が弱く非力。力仕事などは専ら付き人の千尋に任せている。
絶壁。
・堀田千尋
唯一成人している男性。眼鏡をかけ、物腰やわらかそうな優男な美男だが、実際の性格はねじ曲がっている。
彼は林家の執事の息子で、林家に住まわせてもらっていた。静とは生まれた頃からよく知っていて、よく遊び相手になっていた。
毒を吐き、外道行為を繰り返しているが、本人的には主人である静さえ無事なら他はただの暇つぶし。
静に大嫌いと言い続けているが、それが本音ではないことは彼の行動でよくわかる。
武術に優れ、外道行為でも躊躇わない。
・風上ルドルフ
ドイツ人の母親と日本人の父親を持つハーフ。
母の血が強いのか、綺麗な青い目と金色の髪を持っている。恐らく20歳行くか行かないかぐらいの男性。
見た目優しげだが、いざとなるとしっかりとした兄貴になる。個人行動が多いが、彗たちのために何かしていることが多く、何を考えているのかよくわからない。
自分のことをほとんど語らないし、聞いてもはぐらかされる。
自己主張はする方だが、人の意見もよく聞き、番人からみんなを守ることもしばしば。周りからとても信頼されている。
・賀川天飛
「てっと」と読む。ちなみに実在する名前であり、自分のクラスメイトにいた。
いつも帽子を深くかぶり、どこからか現れる人物。がたいがよくて、よくわからない人物。
彗に助言したり、襲い掛かってきたり、助けたり、と敵か味方かはっきりしない。何かを知っている様子だが、決してそれについて語ろうとはしない。
30代くらいの男性。