フリーホラゲーを呟く会

ホラーフリーゲームの感想を不定期に呟く。時々痛い小説があったり。

憩 2 ~ガド~

 さて、と僕は一息つく。姉貴の住むアパートに来るのは何回かあったけれど、こんな風に突然訪ねるのは初めてだ。姉貴は優しいからきっと笑ってしょうがない、とか言うと思う。そんな姉貴に甘えてしまう自分に呆れてしまう。

 姉貴に甘え、家出してきた僕は18歳。受験のことやら将来のことで両親とケンカになり、ついカッとなって家を飛び出してきた。泊まるお金もないし、今夜は冷えそう、でも、家を飛び出してきたのに今更家に戻るのもしゃくだった。結果、姉貴のアパートの前にいるわけだ。

 むしゃくしゃしていて、姉貴に当たりそうで怖い。それ言うくらいなら最初から来るなけど、勘弁してほしい。精神的に結構削られているんだ。

 ドアを叩いてみるが、姉貴の部屋からは物音が一つもしない。さっき見た時明かりもついていなかったし、どこかに出かけているのだろうか? まあ、夜中というわけでもないし、きっと買い物かどっかなんだ。すぐに戻って来るさ。

 僕は姉貴の部屋の前に座り込んだ。

 

 姉貴は、僕の6つ上の異母姉だ。顔つきは父さんに似て優しげ。綺麗な黒髪も父さんから引き継いだらしい。小柄で、可愛らしいのはお母さんに似たらしい。

 姉貴は昔からお姉さん、という感じの女だった。いつでもどこでも、一人で寂しそうな子がいたら声をかけるし、ケンカしたらうまく宥める。こうした方がうまくいくんじゃない? とかさりげなくアドバイスしてくれるし、みんなの意見も纏めてくれる。つまりはまあ、姉貴は人が好いんだ。

 僕が泣いたら、姉貴はよくぎゅっと抱きしめてくれた。小さい時からいつもそう。いつも笑顔で大丈夫だよ、とか、どうしたの? とか、元気出して、とか言うんだ。嫌なことがあったら、聞いてくれたし、僕が姉貴にきつめに当たっても、僕を責めるようなマネはしなかった。姉貴になでなでや、抱きしめができた小学校時代の自分に、代われと言いたい。姉貴よりでかくなった今、そんなことできなくなったんだし。

 あ~、こうやって考えてみると、僕はシスコンっぽいな。姉貴べた褒め、しかも小さい時のぎゅっ、やなでなでを姉貴にされたいと思っている。気持ち悪いとか言われそう。でも、姉貴好きなんだもの。それだけは仕方ない。

 それにしても姉貴、遅いな。

 僕は部屋を離れ、道に出る。近くにスーパーがあったし、そこにいるかもしれない。

 あー、こういう時に何か連絡取れる物があればいいのに。ちょっともどかしく思いながらも僕は道なりに歩いていく。あたりは既に暗く、月も出ていないから結構暗い。姉貴、こんな中いつも帰宅しているのか。何かあったらどうするんだよ。

 僕はぶつぶつ言いつつも歩いていき、近所の公園に差し掛かった。

 黒い黒い髪が、街灯に照らされていた。姉貴ぐらいの身長の女性が、立っているのが視界の隅に映る。姉貴っぽい、と思い、振り返った。暗くてよく見えないが、姉貴らしき人物がいる。なんだ、こんなところにいたのか。こんな時間ここで何していたんだろう?

 ともあれ、僕は姉貴らしきその人に声をかけようとする。

 

 あの時、暗かったのもあった。そして、姉貴が、この時間に誰かといるとは思えなかった。そのせいか、姉貴の正面に立っているだろう人物に気付くことが遅くなった。

 その誰かに気付いた僕が見たのは、姉貴とその正面にいる背の高い男性が、ほんの一秒程度、口づけする場面だった。

 

 

 え、マジで? そう思う反面、僕は思った。

 あの男、ぶっ殺す。

 

 

To Be Continued……