フリーホラゲーを呟く会

ホラーフリーゲームの感想を不定期に呟く。時々痛い小説があったり。

Record Of A War In Cross World 17話

ガタガタと揺れる車の中、新米兵士たちが緊張でこわばった顔をしている。まだ訓練を初めて二か月いくかいかないかの状態だから、それは仕方がない。避難誘導で直接関わらないとしても、来たら市民を守らなくてはならない。例え、盾になってでも。随分と新米にとっては荷が重い。
さすがに緊急の対応には、親父によくついていったから慣れているとはいえ、現場でこうやって動くのは初めてだ(当たり前なのだが)。周りよりはまだ落ち着いている自覚はあるが、微かに自分も緊張している。
他の奴らを見ていると緊張が移りそうで目をそらすと、視線の先にアイツがいた。
アイツはいつものようにすまし、涼しげな顔でじっと前の方を見つめている。緊張のかけらもなく、本当にいつもと変わらなかった。
落ち着いている。
それが、どうしようもなく胸のむかつかせた。どうしてかはわからない。
コイツが他と違って落ち着いていることに、オレが他と同じように少しだろうと緊張していることに、何故かむかついていた。そういう場合じゃないとわかっていながらも。
「……なんだ」
「!!」
オレに見られている(ていうか、ほぼ睨んでいるに近かったのだが)ことに気付いたアイツ。不愉快そうに眉をひそめる。オレも不機嫌そうに(実際不機嫌になったのだが)別に、と投げやりに答える。
「お前には関係ないことだ」
「なら我を睨むな、不愉快だ」
「……」
ごもっとも。
それでもオレはただ無言でそっぽをむいた。どうしても、謝りたくなかったのだ。理不尽なのはわかってはいるのに。
アイツが次の言葉を放とうとした瞬間、教官が大声ですべきことの指示を出し始める。アイツがチッと舌打ちすると同時に、オレはどこかほっとする。緊張のせいだ、おかしいのは。そうやって自分を納得させた。



ウィルは監視カメラの映像と、今のところわかっている事柄が書かれた紙を食い入るように見つめる。右手を顎にあて、何か考え込んでいる。
その目は軍人とは思えない程穏やかで優しげで、今、緊急事態が起こっているとは思えない。
剳乱、と急に声をかける。剳乱はにっこり笑うと、はい、これ、と言って地図と色違いの駒をウィルに渡した。広いテーブルにバサッと広げると、そこにコマを置いていく。指示した配置にコマを置いていくと、今度は黒いコマを置いていく。そして、苦笑する。
「それにしてもまあ、嫌な場所を狙ってくれたな、相手も」
「そうだねえ……軍力では負けないけど、地の利的に向こうの方が多いねえ……市民もいるし……」
「死人はもちろん、ケガ人を出すのも認めん」
んな無茶な、と剳乱は苦笑いするが、ウィルが本気であるのはわかっている。回り道をしてでも人を優先する。それが大将ウィルだ。まったく、少しは上層部も見習ってほしいね、余計な血を見なくて済む。
ウィルはしばらく考え、そして、コマを動かす。
「現在の情報だけだと、コイツらは恐らく、ここの部分か、この部分に向かうな」
「……どうしてそういえるわけ?」
剳乱は開いた地図とウィルが動かしたコマを見つめたまま、そうウィルに聞く。
自分が予想したものと大きく異なる動きだ。情報もまだ少ないし、断定はできない。それでもウィルはよく自分の予想を覆す。どこからその自信がくるのかわからないくらい、自信満々に言う。
ウィルは答える。
「……ほとんど勘」
「だと思ったよ。ウィル君がそうまともに考えて予想したことないしね」
おいおい、とウィルは苦笑いしつつも否定はしない。自分でもまともに考えた覚えがあまりないからだ。あくまで今の情報と、今まであった事件、地形、その他もろもろのことを瞬時に頭の中から引っ張り出し、そのつぎはぎ部分を勘で組み合わせただけだ。自分でもあまり考えている実感がない。
でも、と言って剳乱は地図を見る。
「こういう時のウィル君の勘ほどあたるものはないんだよね〜」
考えすぎて自爆よりはマシだろうし。
そういう剳乱の言葉を聞いてウィルは笑い、またコマを動かす。剳乱はそれを目を細めてみている。ウィルの手に、迷いはない。




リクは走っていた。
身なりの汚い少女の体を抱きしめ、そのまま開いていた建物の中に逃げ込む。
このままではまずい。単体行動をとるなとは言われてこの様だ。命令を聞かなかったくせしてこうなるなんて、バカバカしいにも程がある。急いでこの状況の打開策を考えなくてはいけない。抱きしめた少女をそっと優しくおろしながら、リクは頭の中で状況の整理と戦闘態勢の準備に移る。
人の足音が聞こえる。少女に隠れろ、と言い、リクは入口の陰に身を隠しながら全神経を音に集中させる。呼吸を整え、いつ来ても大丈夫なように構える。


リクがこんなことになったことを説明するには、数時間前に遡る。
「なにやってんだか」
綺麗な顔をした悪友が、小さく舌打ちした。




To Be Continued……


一か月以上放置の末、こんな文に……
リクさんがこんなことしたのには理由があるんですよ!!
ここでは説明できないけれど((殴

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Record Of A War In Cross World 第16話 - 気まぐれ日記

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